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ピレネー山脈の南麓、アルケサル村へ
アダウエスカ村からバルバストロ街道を北へ辿り、アルケサル村に到着しました。
道は徐々にピレネー山脈のグアラ山地に入り、風景も変わってきます。
周辺は「グアラ山脈峡谷自然公園」に指定されて、山と渓谷が美しい自然と風景が残されています。
山の斜面に幾重にも築かれたオリーブの木の段々畑の向こうに、アルケサル村のシンボルである中世の城塞が見えてきました。
空を見上げると、雲は北のピレネー山脈側が曇っていますが、アルケサル付近から南は青空が広がっています。
ピレネー山脈の気候とグアラ山地の特徴
スペインとフランス国境沿い、東西約400kmに渡りそびえるピレネー山脈は、古来からイベリア半島とヨーロッパを隔てる一つの壁のような存在でした。
ピレネー山脈の気の特徴を簡単に言うと、「北西の大西洋」と「南東の地中海」の2つの気候のせめぎ合いで成り立っています。
大西洋からは湿った空気が低気圧として、地中海からは乾燥した空気が高気圧として、季節に応じて強さは変化します。冬は北風により低気圧が優勢で、夏は南風により高気圧が優勢となります。
▲オリーブの実
そのために、山脈の南側まで低気圧や雲が到達することは少なく、グアラ山地は年間を通して乾燥した気候なのです。
アルケサル村の周辺も晴天率が高いために、オリーブ畑が多いのが特徴で、とても「スペイン的」な風景です。
“スペインで最も美しい”アルケサル村
アルケサル村の“アルケサル(Alquézar)”は、アラビア語で「城塞」を意味する、文字通りの城塞から生まれた町です。
スペイン語ではアルカサル(Alcázar)という発音で、スペイン各地に城塞があります。アルケサル村の“アルケサル(Alquézar)”という発音は、アラゴン地方の古い時代での呼び名と思われます。
8世紀に中東から進出して来たイスラム教徒は、アラゴン地方の一帯を支配しました。キリスト教徒は北のピレネー山脈へと追いやられながら、この山脈がイスラム教徒とキリスト教徒が長く衝突を続ける“最前線”となりました。
アルケサル村は、この時にイスラム教徒が築いた城塞が始まりです。
11世紀には、キリスト教徒がこの城塞を占領してから、今のアルケサル村の原型が形作られました。
アルケサル村の風景は、おそらく千年近くも大きく変わることなく残されています。
中世の時代にタイムスリップしたように感じるほどの古い街並みと、美しい城塞の姿から、“スペインで最も美しい村”の一つに数えられることがあります。
迷路のような中世の街並み
アルケサル村は中世の時代の迷路のような街路が特徴です。車も通ることが難しいほどで、観光で来た車は村はずれの駐車場に止めることになります。
細い街路は思ったよりも静かです。山奥にあって観光バスを停めるスペースもないことから、観光客もそう多くはないことがあります。
中央広場も静かなもので子供たちがサッカーしたり、ときおり村人が立ち話をしているのを見かけます。
ここでは当たり前の日常の風景も、異国から来た私にとっては、どこか別の世界か次元にでも入り込んだように感じるほどに、静かな時間が流れています。
スーパーは小さな店が一軒あるだけで、パン屋が二軒ほど、開いているのかいないのか分からないようなバルが数軒あるだけです。
ゆっくり滞在して過ごすのもお勧め
アルケサル村の美しい風景を落ち着いてみるために、連泊してのんびり過ごすのはお勧めです。
小さな村なので時間を持て余すほどですが、その贅沢な時間の中で千年の歴史を感じてみたいものです。
夕日や夜景などを撮影しながら、谷を歩き、城塞に登り、たっぷりと過ごしました。
次回の記事では、アルケサルの絶景を続けてご紹介します。