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アルゼンチン北部の秘境:ウマワカ渓谷
アルゼンチン北部ウマワカ渓谷は、スペイン文化を色濃く引き継ぐアルゼンチンにおいて、インカの文化が今もなお残る特殊な地域です。インカ帝国にとっても、スペインにとっても、この地は“辺境”として扱われてきた土地なのです。
このウマワカ渓谷は、地球の壮大な活動の痕跡を見ることができる特異な地域でもあります。“14色の山”として近年注目される「オルノカル」山や、巨大なサリーナス・グランデス塩湖など、とてつもない地球のリズムを垣間見ることができるのです。
アンデス山脈の小さな村:ウマワカ
ウマワカ村は、プルママルカ村から約2時間ほど渓谷の奥にある小さな村(標高3000m)です。かつてインカ滅亡の後、スペイン人はこの村を基点に、ウマワカ渓谷を支配していました。その後、アルゼンチン独立に際してウマワカ村は大きく貢献したことから、この地は地元の人々にとって特別な意味を持つ村となりました。
このウマワカ村から、“14色の山”オルノカルが見えてきます。ほんの20年前までは、この地を訪れるツーリストは少なく、道路事情も悪かったことから、遠望するオルノカル山に惹かれても、実際にそこへ行くことはできませんでした。
神秘的で多彩な“14色の山”オルノカル
ウマワカ村から道は一変して、未舗装道路となります。遠くに見えるオルノカル山は一際高く、カラフルに輝いています。目を離すことができない、ある種の山が持つ魔力を、オルノカル山も持っているようです。
標高4300mの展望台に着くと、森林限界を越えていることから、大草原が広がります。その先に、谷を挟んでオルノカル山の屏風のような山容を望むことができます。手前の谷は約600mの深さがあることから、この展望台からは実に高度感のある展望を楽しめます。
お昼前後の時間帯は太陽が中天に位置することから、オルノカル山は地層が持つ色がはっきりと映ります。その後は太陽の傾きに合わせて、山の断面は少しずつ色を変化させていきます。一番ダイナミックな時間は夕日の時間でしょう。日が没する直前、運が良ければオルノカル山がまばゆいほどに橙色に輝く姿を望めるかもしれません。
大地の壮大な歴史を物語る「14色の山」
“14色の山”と呼ばれるオルノカル山の模様は、地球の壮大なリズムを物語るアート作品のようです。露出する地層には、その地層のできた年代に応じて組成が異なり、その太古の岩石化した地層が様々な色に輝くことから、「14色の山」と呼ばれるようになりました。
かつて南米大陸がまだ分裂していた時代には、ウマワカ渓谷は海の底でした。太平洋プレートとの衝突でじわじわと隆起して、巨大な大地のエネルギーに捻じ曲げられながら、標高4300mまで押し上げられたのがオルノカル山です。ウマワカ渓谷周辺部はプレートが衝突する場所より東にあるので、火山や地震はなく、数千万年かけて隆起してこの山脈を作り上げたのです。
地層の下部には無数の海洋生物の化石をみつけることができます。
大地創生の神秘的なまでに壮大な歴史を垣間見ることができるのが、オルノカル山なのです。