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絶滅危惧種・ビクーニャの楽園:サリーナス・イ・アグアダ・ブランカ自然保護区
コルカキャニオンに向かう「サリーナス・イ・アグアダ・ブランカ自然保護区」は、ラクダの楽園です。
リャマやアルパカの放牧だけではなく、野生のラクダであるビクーニャも容易に観察することもできるでしょう。生息数が少ないビクーニャは“幻のラクダ”と言われるほどに珍しい種類なのです。
標高約3500~5000mの高原地帯に位置するこの自然保護区は一見すると荒野ですが、ビクーニャにとってはまさに楽園なのです。
南米大陸には大きく分けると4種類のラクダがいます。
リャマとアルパカの2種類は家畜として人とともに暮らします。どちらも標高約3000mより高い高所に適応しています。他の2種類のラクダ、ビクーニャとグアナコは野生動物で、前者のビクーニャは標高約4000m~5000mのアンデス高原(アルティプラーノ)に生息し、後者のグアナコは低地の乾燥地帯(パタゴニアなど)に生息しています
ビクーニャは南米のラクダの中で絶滅を危惧されている希少種です。ビクーニャの体毛はアルパカよりも高値で取引されるために、乱獲により生息数は激減していました。そのため20世紀後半にワシントン条約により保護対象に指定されます。
今世紀になってから、各国の国立公園や自然保護区で手厚く保護されることで、いまビクーニャの生息数は少しずつ回復して40万頭が生息すると言われます。
ビクーニャの体毛“神の繊維”
標高約4000~5000mの厳しい気候に生きるビクーニャの体毛は、ウールやカシミヤよりも細く、また保温性に優れます。その上質な毛はアルパカを越えることから“神の繊維”として珍重されます。インカ帝国の時代には、ビクーニャの毛は王族だけが着用していたと言われます。今ではビクーニャの毛を使った衣服は数十万円、または100万円を超えるほどに高級な繊維です。
ビクーニャとの共存と狩猟祭“チャク”
ビクーニャは人に懐かないために家畜化できませんでしたが、インカ帝国よりも古い先インカ時代より、人々は年に一度ビクーニャを生け捕りにする「チャク」と呼ばれる狩猟祭をしていました。今もアンデス山脈に残る風習で、ビクーニャの個体数を減らさずに体毛を得る方法として、徐々に復活しつつある伝統の一つです。
生け捕りの方法は、まず人々は長い横隊を組んで徐々に群れを囲んでいき、その輪を狭めていきます。そして最後に道具を使わずに手で生け捕りにして、その場ですぐに毛刈りを行います。
ビクーニャの体毛は1キロ当たり500ドル以上で売れるために、地元の人々にとっては貴重な収入源でもあるのです。
インカ帝国の滅亡後は、この伝統は廃れてビクーニャは乱獲されてしまいます。しかし、20世紀後半に絶滅が危ぶまれてからビクーニャが保護されるなかで、“チャク”は資本主義経済と自然保護の両立の一例として復活したのです。
おそらくインカ以前より数千年に渡り続いたであろう伝統行事「チャク」は、持続可能なビクーニャとの共存方法として、これからアンデス高原の各地で広がっていくのではと思います。
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