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パタゴニアを最も愛した偉大なる写真家・アゴスティーニ神父
約100年前、パタゴニアは未開の大地が開拓という名のもとに人の手によって剝がされていく時代でした。狩猟採集で暮らす先住民たちは駆逐されて、草原パンパは有刺鉄線で区切られて、ピューマやグアナコ(ラクダ科)を追い出し大量の羊を放牧する大牧場(エスタンシア)が建設されていました。
スペインやイタリア、そしてイギリスやユーゴスラビアなど、様々な国から来た移民たちは、パタゴニアに翻弄されながらも、暮らしを切り開いた「パタゴニア黎明」の時代です。
アルベルト・デ・アゴスティーニは、この時代にパタゴニアを駆け抜けた探検家であり写真家です。
彼ほどパタゴニアを愛した人はおそらくいないのではないだろうか。
パタゴニアの山を撮るならば、様々な角度で撮り、未開の氷原で未踏の山脈を撮影し、消えゆく先住民の生活を写真に残しました。
その資料は、今も語り継がれる一つの伝説なのです。
神父といっても、探検や写真の仕事が生涯にわたり忙しかったのでは思います。
この神父が残した写真の数々のおかげで、100年前のパタゴニアの山や氷河、そして先住民の暮らしを今も知ることができます。彼は、写真家であり、探検家でもあり、民俗学者でもあったのです。
当時の古典的なカメラを背負い、山だけではなく、ときには氷河を登り、撮影をしたのは驚くべきことです。一生をかけて、パタゴニアの隅々まで歩き回り、彼はいくつもの本を出版しました。
その中でも、最も有名な傑作は「パタゴニア・アンデス」です。
パタゴニア中の山や氷河、先住民の写真をふんだんに掲載し、緻密な文章でパタゴニアを網羅した伝説の本です。
でも、誰が見ても感動する普遍的で芸術的な山岳写真や風景写真、先住民写真の数々を載せていて、パタゴニアに暮らす人であれば、知らない人はいない名著です。
私が初めてこの本に出会ったのは、大学3年生のころ、大学の図書館の書庫ででした。たまたま発見した本は、スペイン語版・ブエノスアイレスで発刊された、記憶では「初版本」であったと記憶します。
当時、初めてのパタゴニアから帰国したばかりの私は、アゴスティーニ神父の本を探していたのです。
ブエノスアイレスで発刊された名著がなぜ大学の書庫にあるかは謎でしたが、この本を借りて、すぐに全ページをコピーしました。300ページ以上、ぎっしりと書かれた文章を、スペイン語から日本語に、一年かけて翻訳したものです。完成度の高い芸術的な写真が何百枚も掲載されているので、読むことに飽きなかったのを覚えています。
現代の私たちが見ても、まったく見劣りすることなく、本に見入ってしまう普遍的な魅力を持つ本を、いつか自分の手で再び翻訳したいと思っています。
写真展「パタゴニア」ケンコー・トキナー ギャラリー
松井の在廊日時(最新版)
《松井の在廊日時/ケンコー・トキナー ギャラリー》
27(木) 13:00~18:00
28(金) 12:00~17:00
3/1(土)、2(日)、3(月) 12:00~18:00
ケンコー・トキナー ギャラリー(中野)にぜひお越しください。