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パタゴニアの不思議な雲:レンズ雲
パタゴニアの空には、だいたい不思議な雲が浮かんでいる。
晴天で無風な時は、嵐の前の前兆のようで不安になってしまう。
それほどに、不安定な気候がパタゴニアらしさなのです。
このパタゴニア独特な雲は、レンズ雲と呼ばれる高積雲です。
日本でいえば、富士山に時々現れる笠雲が、レンズ雲と同じ高積雲です。
上空で強風が吹くときだけに発生する特殊なこの雲を、パタゴニアでは日常的に見ることができます。
レンズ雲を生み出す風と湿度は、南極から吹いてきます。
南緯40度から60度にかけて、南北およそ2000kmほどのパタゴニア地方の気候は、南極に支配されているのです。
強風というよりも暴風というほどに強烈な風は、風速20mは普通で、40mを越すこともあります。
イギリスの探検家エリック・シプトンは、パタゴニアでの探検記の題名に『嵐の大地』と名付けたほどです。
強風の空に現れるレンズ雲は、風に流されるわけでもなく、いつまでも同じ位置に浮かんでいます。
でも、形はどんどん変幻自在に変わり、その不思議なデザインをいつも楽しんでいます。
強風に身をかがめて歩いているうちは、パタゴニアの自然にまだ慣れていないのかもしれません。
暴風に打たれながらレンズ雲を眺める余裕が出てくると、もっとこの土地が好きになるでしょう。