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草原に佇む巨石が物語る氷河期の風景
パタゴニアの名峰フィッツロイの山麓、大西洋に向けて東西約200kmに渡る緩やかな斜面には大草原(乾燥パンパ)が広がります。
この大草原を歩いていると、大きな巨石を見つけました。小さな丘の上に、今にも転がりそうな絶妙な角度で、その高さ4mほどの巨石はまるで何かのモニュメントのようです。
この不思議な巨石は、かつてこの草原を覆っていたビエドマ氷河により山から運ばれてきた「迷子石」です。
かつてパタゴニアを覆った大氷河の痕跡「迷子石」
迷子石はその場所の地質とは異なる石が不自然な形で佇むことから「迷子石」と名付けられました。
かつて氷河期の時代、名峰フィッツロイの裏にある「パタゴニア南部氷原」は今よりもはるかに大きく、そこから氷河が無数にあふれ出ていました。
現在のビエドマ氷河は、長さ80kmの巨大なビエドマ湖の東端にわずかに接すだけの長さ約10kmほどの氷河です。しかし、かつてはこの氷河はビエドマ湖を覆うほどに巨大でした。氷河に含まれるミネラルが溶け込んで美しいグレイシャー・ブルーを湛えるビエドマ湖は、その全体が氷河に覆われていた証であるのです。
この時代に氷河は源流部のパタゴニア氷原からフィッツロイ山群の岸壁を削りながら前進しました。そして氷河の上に落ちたある巨石が、延々と長い年月をかけて運ばれて、この場所で氷河が溶けて無くなり、取り残されたのです。
数万年、数十万年の地球の出来事を、この巨石が体現しているようです。迷子石を見ると、かつて氷河期の時代、パタゴニアが今よりも氷に覆われていた時代に思いを馳せます。