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パタゴニアのシンボル「カラファテ」とは
「カラファテ」はパタゴニアだけで見ることができる木の実です。
栄養豊かなことから“スーパー・ベリー”と言われたりしますが、実際にはメギ科の植物です。
カラファテは多年生の低木、常緑樹です。アルゼンチン側では、この木をパタゴニアのシンボルのように愛し、町の名前を「エル・カラファテ」としたほどです。今ではこの町は、パタゴニアの基点として栄えています。
初秋に甘酸っぱい実が丸々と熟すと、人々はカラファテの実を取りに茂みに入る季節の風物詩となっています。ジャムやゼリーに加工して、寒い冬を越す保存食の一つとします。
パタゴニアに伝わる神話「カラファテの実と魔法」
「カラファテの実を食べると、いつか再びパタゴニアに戻ってくる」
パタゴニアにいると一度は耳にするフレーズです。
この言い伝えの起源は、パタゴニアで狩猟採集の生活で暮らしていた先住民テウェルチェ族の神話です。テウェルチェ族は紀元前13000年にはこの地に辿り着き暮らしていたと言われますが、現在はほぼ絶滅してしまいました。
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「カラファテ」はテウェルチェ族(“アオニケン族”とも言われます)の族長の娘の名前です。彼女の眼は金色で、部族で最も美しい娘として族長の誇りでした。
ある日、カラファテはライバル的な存在の部族セルクナムの若い青年と出会います。二人はたちまち恋に落ちますが、お互いの部族は決して認めない関係でした。ある日、二人は駆け落ちする計画を考え始めました。
族長がその計画を知ると激怒して、青年は悪霊“グアリコ”の化身として彼女をたぶらかしていると考えました。すぐにシャーマン(祈祷師)に相談して、どうしたらこの計画を阻止できるか助けを求めます。
シャーマン(祈祷師)は呪術でカラファテを小さな木の茂みに変身させてしまいました。彼女の黄色い目はその木に咲く黄色い花となりました。
セルクナム族の青年は一族を離れてカラファテと落ち合おうとしましたが、どうしても彼女を見つけることができません。そして、彼は自分自身に呪術をかけて鳥に変身して、彼女を探し回ります。ようやく花に変身したカラファテを見つけることができました。しかし、族長は彼らが二度と再会できないように、この木に棘(とげ)を付けていました。青年はただ見ることだけしかできず、失意の元に死んでしまいます。
シャーマン(祈祷師)は、若い二人に不幸を引き起こした罪悪感に苛まれて、カラファテの黄色い花にもう一つの魔法をかけます。黄色い花の一部を青年の心を象徴する紫色の木の実に変えて、二人が一緒にいることができるようにしたのです。
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この神話を基に、いつしか人々は、カラファテの実を食べる人はこの二人の呪術に掛けられて、何度も何度もパタゴニアに戻ってくると言われるようになりました。
神話とともに想う先住民の1万年の風景
この神話は観光客に知られる有名なお話です。
この美しい風景に満ちたパタゴニアはここにしかないので、いずれまた戻ってきて欲しいという想いとともに、いつしか広まっていったのでしょう。
世界中に残る神話は、ギリシャ神話から北欧神話、そして日本神話まで、荒唐無稽で意味をくみ取るのが難しい不思議な話ですが、そこには綿々と受け継ぐための何らかの意図やアイデンティティが隠されていると思います。
かつてこの大草原で1万年以上暮らしていた小さな部族はすでにパタゴニアから消え去ってしまいました。
今残るのはわずかな神話と古い地名だけですが、彼らが見たパタゴニアを想像するだけで、パタゴニア各地が秘める人と自然の物語は一段と深くなるかもしれません。
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