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世界で3番目の大氷河地帯:パタゴニア
南極、グリーンランドに次いで、パタゴニアは世界で3番目の規模で氷河が広がります。
果てしなく広い草原とは対照的に、パタゴニアを縦断するように南北に細長く氷の回廊が、アンデス山脈とともに伸びています。
この回廊は大きく分けると「パタゴニア北部氷原」と「パタゴニア南部氷原」、合わせて“パタゴニア大陸氷床”と呼ばれます。
このアンデスの山上に広がる氷原から流れ落ちる氷の帯が「氷河」です。パタゴニアでアンデス山脈から流れ落ちる氷河の数は100以上に及び、その中で最も規模の大きな氷河がペリトモレノ氷河です。
ペリトモレノ氷河
幅3キロ、高さ60mの大氷壁が間近に迫るペリトモレノ氷河は、世界有数の巨大な氷河です。
展望台の目の前に迫る大氷壁が崩れ落ちるとき、大砲を無数に放つような轟音を轟かせます。
世界中の氷河が温暖化に伴い後退する時代にあって、このペリトモレノ氷河は後退しない不思議な氷河でもあります。
逆に数年に一度、氷河は突然前進を初めて展望台の間近に迫るほどです。
人の大きさは豆粒ほどの小ささでしかない、その壮大なスケールはまさに地球のリズムで躍動しているのです。
氷河のブルーホール「ムーラン」
ペリトモレノ氷河でもし時間があれば、氷河トレッキングをすると、さらに氷河の魅力を堪能できるでしょう。(年齢制限で65才以上の方は参加できません)
間近で望む展望台も大迫力ですが、やはり氷河の上を歩くと、その異世界的な風景に圧倒されるでしょう。
数万年の時をかけて、山上の氷原から流れ落ちてきた氷河は、とてつもない氷同士の圧力で圧縮されたことから、美しい青い光を放ちます。陽光を反射する、という表現よりも、青い光を自ら放つ、と言う方がその美しさは伝わるでしょう。
氷河に散らばる氷の塊は恐ろしく固く、そして透明なことに驚きます。氷河に空いた穴には水が貯まり、暗い底は水に吸い込まれてしまいそうです。
その幻想的な世界は、まるでおとぎ話のようで、とても現実離れしているのです。
オーストリアの作家、アーダルベルト・シュティフターの作品「水晶」の世界観そのままです。
氷河を歩き、もし運が良ければ、氷の穴「ムーラン」や氷のアーチを見つけることができるでしょう。青い氷の穴は、まさに氷河のブルーホールと呼ぶべきです。
ムーランとは、氷河の地下水の水道が隆起して出現したものです。数万年もの間、氷河の地かで水が通っていたトンネルは、下流の末端部で表面に現れます。
出現すると、融解とともにその姿を消すことになります。早ければ1週間で溶けてなくなってしまうので、まさに「幻の絶景」といった貴重な自然のオブジェなのです。
まるで生き物のように動き、様々な美しい表情を見せてくれるペリトモレノ氷河は、何回訪れても飽きない魅力を秘めています。