パタゴニアの朝は凍えるように寒い。星空が白み始める黎明の時間、世界がしんと静まり返るなか、凍える手をこすりながら朝日を待った。
地平線まで広がる大草原から、フィッツロイ峰の岩峰が突き出している。天を衝くように聳える峰には、朝日が昇れば最初に陽が当たる。朝日が当たると、岩峰は紫から橙色を経て金色に変化する。
ときに周りの世界そのものが、朝日の色に染まってしまうこともある。
何度見ても魅了される瞬間で、それはフィッツロイ峰の最も美しい時間なのだ。
晩秋の空気は、骨まで沁みるほどの寒さだが、黎明から朝日に変化する瞬間は寒さを忘れて見入ってしまう。
大きな空を覆うように浮かぶ大きな雲は、フィッツロイと呼応するかのように、朝日に焼けた。
朝日の絶景に出会うには、太陽が上がる空から現在地にかけて、いかに空が開けているかが重要だ。その微細な自然の匙加減により、朝焼けが発生するかは決まるのだ。
天候の変化の激しいパタゴニアでは、朝日の状況は直前まで予測できない。その可能性の中で、朝日の絶景を望めた時の充実感もまた、パタゴアニならではの感動だ。
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