温暖化とは逆行するように前進・後退を繰り返す「ペリトモレノ氷河」は、世界でも稀な存在です。過去100年間でほとんど氷河は同じ場所に留まっています。
そんなペリトモレノ氷河ならではの現象が、急激な前進と崩壊現象「ルプトゥーラ」です。
高さ60m・幅5kmの巨大な氷壁が前進することで、数年に一度だけ起こる貴重な瞬間です。
目次
氷河崩壊「ルプトゥーラ」とは
「ルプトゥーラ」は、氷河がまず前進することが発端となります。複雑な氷河のメカニズムによるので、今でもなぜ氷河が数年に一度前進するのかは謎のままです。
この急激な氷河前進により氷河末端部が陸と接したときに、湖を2つに分断します。東西に約80kmほどもある巨大な湖において、ペリトモレノ氷河がその西端の一部を堰き止めるわけです。
西側の堰き止められた湖は水位10~20mほども上がります。
そうするうちに、不思議とペリトモレノ氷河の前進する運動は徐々に止まります。
今度は、堰き止められた膨大な水の圧力が優勢となり、陸に接した氷河末端部を、どんどん削り取っていきます。
氷河末端部は水の圧力にどんどん削られて、いよいよ氷壁の崩壊「ルプトゥーラ」が始まります。氷河の底にトンネルが穿たれて、濁流のように水が流れるのです。このトンネルはどんどん大きくなり、最後は氷のアーチが残されるのみとなります。
この氷河のアーチ崩壊が何時何分に起こるかは賭けの対象になるほどで、アルゼンチンではテレビで生放送されていて、数年に一度の大イベントとなっています。
ちょうど2年ぶりに発生した「ルプトゥーラ」
今年の「ルプトゥーラ」は現地時間で2日前に始まりました。
パタゴニアでも多くの氷河は著しく後退しているのですが、こうして今も活発に動き続けるペリトモレノ氷河のような例外もあり、氷河の複雑な動きはまだまだ謎に包まれています。
写真は2016年に、ルプトゥーラから10日後に撮影したものです。既にアーチは完全に倒壊して基部だけが残っていました。
2年前の「ルプトゥーラ」は3/9に始まったので、ほぼ丸2年後の同じ日付に始まったということで、これもなんとも不思議です。