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紅葉のパタゴニア
パタゴニアの秋は、南極ブナが赤く染まる美しい季節です。
日本の紅葉と異なるのは、その背後に常に暴風を感じることでしょう。
秋のしっとりした趣を楽しむの日本の風景とは異なり、山から吹き下ろす暴風は常に冷たく、空を見上げれば雲が絶えず流されています。空から響くゴォゴォという風の音がパタゴニアの日常の音なのです。
そんなパタゴニアに慣れていると、風も雲もない快晴の日に紅葉を歩いても、少し物足りなく感じてしまうものです。
フッツロイ山麓のエル・チャルテン村にて、紅葉で最初に色づき始めるのは、森林限界に位置する南極ブナです。風が常に強い斜面では、ハイマツ状に丈が低く育ちます。
赤く色づく南極ブナが山上に目立ち始めると、山麓の森も徐々にまず黄色く変化していきます。
森の中でひときわ早く赤く色づくのは、年老いた南極ブナです。その姿形には、暴風との長年の格闘を感じさせる貫禄さえも感じるでしょう。
絶えず暴風に吹き付けられるので、樹齢は最長でも約100~150年ほどと言われます。その最後はやはり風に倒されて終わりを迎えます。
パタゴニアの暴風に順応することで獲得した繁栄ですが、南極ブナの森は圧倒的な自然を前にどこか物憂げに感じたりします。
亜熱帯や温帯の森に感じるような漲る生命力とは異なり、パタゴニアの圧倒的な自然に翻弄されるその様こそが、南極ブナの森に漂う大きな要素と言えるでしょう。
冬を前にいよいよ気候は厳しくなる中で、南極ブナの森は静かに色づき、やがて一瞬の燃えるような紅葉を経て、晩秋を迎えます。