Loading

風景写真家・松井章のブログ

ブラジル・レンソイス砂漠/写真展「南米大陸の幻想風景」撮影エリア紹介②

南米大陸の「地の果て」へ

ブラジル・レンソイス砂漠の壮大な風景を見ていると、いつも人のスケールや時間軸では測ることができない無限ともいえる大きさに圧倒されます。人智を超えた「地球のリズム」に身をゆだねるような貴重な経験は、いったい人生で何度あるだろうか。
南米大陸の「地の果て」に行くということは、パラレルに存在する別世界に行くようなものなのだ。

レンソイス砂漠:砂漠に湧き出す2万個の湖


ブラジルの北東部に広がるレンソイス砂漠は、その面積は約15万ヘクタールに及び、日本でいえば東京23区の2倍ほどの面積です。砂漠の砂は水晶で成り立つ白砂の砂漠で、白砂の砂丘が連なる風景は「シーツ」のように見えることから、シーツを意味する「レンソイス」と名付けられました

この広大な砂漠に、1年の内にわずか3カ月だけ、約2万個もの湖が地下から湧き出します。レンソイス砂漠は膨大な地下水を蓄えていることが、その他の世界中の砂漠との大きな違いです。雨季の間に地中に染み込んだ水を蓄えた砂漠は、雨季が明ける頃から地下から水が溢れ出し、約2万個ともいわれる湖や幻の河川を出現させます。湖は美しいエメラルド色を放ち、水と砂漠が共存する風景は、まるで別の星にいるかのような絶景なのです。

“砂漠”とは対極にあるような“水”が、レンソイス砂漠では同居していることで、世界でも唯一レンソイスだけで見れる絶景を作り出しています。

砂漠に連なる砂丘と“風紋”


滑らかに連なるレンソイスの砂丘は、大西洋から吹きつける風が大きく影響しています。風は水晶の地面に「風紋」を刻み込みます。太陽が傾くと、アートのように不思議な縞模様が地平線まで浮かび上がります。

そして、連なる砂丘もまた風による刻印です。鳥の目で砂漠を見下ろせば、砂丘の連なりもまた「風紋」と同じように、風向きに合わせていることに気づくでしょう。極大の「砂丘」と極小の「風紋」は、風という絶対的な存在の下で相似しているのです。

風が創り出すレンソイスの悠久の歴史


レンソイスの白砂は、“結晶化した石英”=水晶で成り立ちます。
とても固い性質の水晶が砂漠の砂状に細かく研磨されるまでには、2億年とも言われる気の遠くなるような時間がかかりました。レンソイス砂漠の始まりは、かつて地球の大陸の全てが一つであった「パンゲア超大陸」の時代にまで遡ることができるのです。
このパンゲア大陸が分裂する時に、レンソイス砂漠を境にアフリカ大陸と南米大陸に分断されたそうです。

水晶の砂の源は上流のアマゾンです。川から海に流されて来た土砂は、海岸から数キロに渡る遠浅の海で干満の波に擦れ合いながら、比重の重い水晶だけが留まり磨かれます。
ブラジル北東岸は、大西洋の“南赤道海流”がアフリカ方面から流れてきています。海流とともに、“貿易風”が東から吹きます。水晶はこの風に乗ってレンソイスに吹き飛ばされます。膨大な水晶が積み重なり、砂漠から海に流されて海中で研磨されて、再び海風で砂漠に吹き飛ばされます。

この無限の繰り返しの果てに、より純度の高い水晶だけが残されて、白砂のレンソイス砂漠が形成されました。

貿易風は雨季にはレンソイスに雨をもたらします。膨大な地下水が砂漠に蓄えられることで、美しい湖が乾季に湧き出すのです。

レンソイス砂漠に生きる生命


真っ白な砂漠では一見すると生き物の存在が皆無に見えますが、生命は逞しくこの砂漠にも適応しています。
レンソイスで一番不思議な生き物は、“魚”でしょう。湖を見ていると、体長3cm~5cmほどの小魚が群れがいます。乾季の後半に湖が干上がってからは、約半年もの間、彼らは水分を含む砂の中に潜り込んで次の季節を待つと言われます。

砂漠を取り巻くように、カシューナッツの林が広がります。砂漠の水が染み出すオアシスに自生していて、カシューナッツの緑がまるで砂漠を縁取るようです。

ここには19世紀頃から人も生活をしていて、人々はカシューナッツの林にキャッサバイモを植えて、砂漠での放牧や細やかな漁業による半自給自足の生活をしています。

アマゾンから水晶を含む土砂をもたらす川は、レンソイス砂漠の外れにあるプレギサス川です。河口から数キロに渡り淡水と海水が混じる汽水域で、巨大なマングローブ林を形成しています。高さ20mにも及ぶマングローブは世界最大級のマングローブです。

夕方、プレギサス川では、巣に戻るショウジョウトキの群れを見ることができるでしょう。驚くほど真紅に染まった美しい鳥で、夕日に反射して眩しいほどです。この赤色の源は、マングローブに含まれるカロテノイドです。

マングローブの森で、カロテノイドを吸収したプランクトンをエビやカニなどが捕食して、そのエビやカニをショウジョウトキが捕食することで、カロテノイドはより蓄積して、ショウジョウトキは全身に真紅になると考えられています。

「南米大陸の幻想風景/松井章 写真展 ~The Dynamic Earth: SOUTH AMERICA~」専用ページ

「レンソイス」ブログ関連記事集

「ペルー」ブログ関連記事集


「レンソイス」専用ページ

フォトギャラリー:レンソイス

【動画】ブラジル絶景集

==★チャンネル登録はこちらをクリック★==

パタゴニア/写真展「南米大陸の幻想風景」撮影エリア紹介①

ペルー・アンデス山脈/「南米大陸の幻想風景」写真展:撮影エリア紹介③

関連記事

  1. ボリビア東部「チキタニア」:芸術を愛する先住民の大地

    2024.08.09
  2. 南米の“幻のラクダ”ビクーニャを撮影するベストスポット

    2019.08.09
  3. 新大陸の富の行方①:中南米からスペインへ 

    2022.04.25
  4. パタゴニアの風と森:亜南極に順応した「南極ブナ」の繁栄

    2017.07.10
  5. 【北海道ニセコ】曽我北栄環状列石から想像する縄文時代

    2021.07.30
  6. 写真を展示:小川清美 写真教室『はじめの一歩写真展』

    2017.10.03
パタゴニア
2024年10月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

最近の記事

アーカイブ

PAGE TOP