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原始の熱帯雨林に覆われる西表島
沖縄県の琉球列島で、最も原始の自然が残る西表島では、山と森がシンボルと言えるでしょう。
その他の島々とは異なり、島には山が連なることで雲が発生しやすい地形です。雲がもたらす膨大な降水量は豊かな森を養いました。そして島をぐるりと囲むように、海水と淡水が交わる汽水域には、マングローブ林が広がります。
西表島には日本に生息するマングローブの7種類の全てを見ることができます。日本全体のマングローブ林の面積の約3割が西表島にあります。
マングローブ林は海外線の浸食作用を防止するだけではなく、水質を浄化する機能も持っています。周囲に透明度の高い海と大きなサンゴ礁があることも、西表島の熱帯雨林やマングローブ林と大きく関係しているのです。
また、西表島が急峻な山に覆われているので、雨が降れば一気に川へと流れますが、マングローブ林という緩衝地帯で泥が堰き止められることで、サンゴ礁の海を濁すことなく透明に保っています。
サキシマスオウノキの板根
このマングローブ林において、内陸側に生息するのが、板状の根(板根)が特徴のサキシマスオウノキです。
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マングローブとは
マングローブとは、亜熱帯地域の汽水域の干潟に形成される植物群落の総称です。世界中に分布していて、70~100種ほどに分かれますが、大半がヒルギ科、クマツヅラ科、ハマザクロ科に3科に分類されます。
マングローブの特徴といえば、干潟の不安定な地面に無数の根を張ることです。
幹からタコの足状に伸びる根は「支柱根」と呼ばれます。また、地を這う根は満潮時には水中に没することから、タケノコのように水上に垂直に値を出して呼吸するための「呼吸根」という根もあります。
マングローブ林は陸上の森と同じく、様々な生物の生息環境となっています。カニやエビの甲殻類や貝類、魚類で言えばハゼやウナギ、そしてそれらの生物を捕食するサギなどの鳥類も集まります。森林と海という2つの異なる環境の緩衝地帯として重要な役目を担う“命のゆりかご”です。
近年では世界中のマングローブが破壊されています。マングローブの木は木炭の材料となり、干潟はエビの養殖場に最適なことから、伐採が進んでいるのです。