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ブランカ山群とワスカラン国立公園
ペルー・アンデス山脈で最も氷雪峰が集中するエリアが、ワラス周辺のブランカ山群です。赤道直下にも関わらず巨大な氷河が山を覆う特殊な環境から、ワスカラン国立公園は世界自然遺産に指定されています。ペルー最高峰であるワスカラン(6768m)を中心に6000m峰が林立するヒマラヤ並みの展望から、登山やトレッキング、山岳写真を目的に多くの旅行客が訪れます。
山岳民族の小さな家族との邂逅
写真はペルー・アンデス山脈をテーマに巡る撮影旅行で、ブランカ山群の小さな村でキャンプしていたときに撮影しました。
草原越しに巨大な氷壁を望む絶景のポイントで、夕刻の山岳写真の撮影準備を整えてから村を散歩していると、ある老婆と出会いました。畑で鍬を打ちジャガイモを掘り出している老婆は、寡黙ながらも異邦人が気になるようでポツポツ話してきます。そうして思い切って写真を撮りたいと言うと、老婆は頷きながら着替えに家に戻りました。
一張羅を着て出てきた老婆の後には、孫たちも出てきます。姉はインカらしい虹の配色の帽子を被り、ぐずる妹にオレンジを渡して連れてきました。
素朴な衣装と、相反するような帽子の原色は、アンデス山脈に根付くケチュア族の歴史そのものです。自然とともに生きてきた山岳民族ならではの、ある気高さを写真に収めました。
大地の恵みを糧に生きる山岳民族“ケチュア族”
インカ帝国よりもっと前、約2000年以上もこの地に住むケチュア族は、まさしくアンデス山脈の先住の民です。アンデス高原の厳しい気候は乾燥帯が多いですが、氷雪峰が集まるブランカ山群には、氷河がもたらす豊かな水があります。この大地の恵みのおかげで多くのケチュア族が、古くからこの地に暮らしています。そのため、ブランカ山群の山麓の深い谷には、急斜面にも段々畑が築かれています。これらの畑の石垣はマチュピチュ遺跡より古いものもあります。
インカ帝国の末裔としての強いアイデンティティを持つケチュア族は、ペルー各地の山岳地域に暮らし、今も華麗な民族衣装を羽織っています。