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花火で表現する美の世界
世界で最も美しいと言われる日本の花火は、繊細な火花で芸術的な美を表現しようとします。
多くの国では派手な火花と音の迫力で人々を高揚させるものですが、日本では花火に“祈り”を込めて、美の先に日本的な“儚さ”を感じ取ります。“儚さ”を体現するように、咲けば必ず散る“花”にたとえて「花火」と名付けたことからも、日本人が花火に求めるものは独特な感性によるものです。
その感性は言い換えれば、「もののあはれ」という言葉になるかもしれません。平安時代の貴族社会で流行し、「土佐日記」、「古今集」、「源氏物語」などにも登場します。四季に感じる情緒だけではなく、生活全般における無常観として、日本人の思想の根底となりました。
日本人の集団的無意識となったこの感性(儚さにも美を感じる無常観)は、日本列島が自然災害や戦乱に翻弄される中で、仏教思想と結びついたと言えるでしょう。
花火の歴史
花火が生まれたのは、紀元前3世紀の中国における火薬の発明に遡るそうです。ヨーロッパでも花火はルネッサンスの時代に鑑賞用として開発されます。
日本においては、室町時代に遡りますが、鑑賞用として花火が登場するのは江戸時代になるようです。戦国時代が終わり、武器として火薬が不要になったことから、火薬を鑑賞用として使う花火が誕生するのです。
日本最古の花火大会は、1733年の墨田川花火大会でした。この花火大会は大飢饉と疫病により亡くなった人々の“鎮魂”として開催されました。
その後、納涼のシンボルとして、花火を見ながら夏を涼むという文化が始まります。
現代の日本の花火
今でも日本では花火大会が主に8月中旬に行われるのは、「鎮魂」の意味合いもあるからです。8月13日~8月16日の“お盆”は、「先祖の霊が家に戻ってくる期間」とされています。お盆には先祖の霊を迎え入れ・送り出すことに火を焚くことから、花火もまた重要な意味があるのです
こうして日本独自の発展を遂げた花火は、日本人の心象風景の一つとなり、「夏の風物詩」となりました。
大空に舞い散る火花に「祈り」を込める花火は、生と死の間(あわい)を日本人に予感させます。
多くの日本人が夏の夜空に舞う花火に心を動かされるのは、日本人独特の美と死生観が根底にあるからです
連綿と続く文化を遺伝子レベルで引き継ぎ醸造されるのが、民族あるいは集合体それぞれのアイデンティティというものなのでしょう。
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松井章 写真事務所
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