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風を切り優雅に飛翔するグンカンドリ
大空に編隊を組んで飛ぶグンカンドリの飛翔は、ガラパゴス諸島で最も優雅な姿かもしれない。
日没時にクルーズ船が出港すると、船を追うようにグンカンドリの群れが風を切って飛んで来ます。強風のなかグンカンドリが近くを鋭く横切ると、ギュンギュンと風を切る音が聞こえてきます。
まるで鳥が船を見送るかのようで、甲板に居合わせた乗客は一様に静かに空を見上げていました。それはなんとも感傷的な情景で、おそらくそこに居合わせた人たちは同じような面持ちで空を見上げていたのではと思います。ガラパゴス諸島で迎える最後の夜でした。
夜闇が迫り始めると、グライダーのように空を滑空してグンカンドリは一羽一羽すこしずつ島へと戻っていきました。
グンカンドリの特徴
グンカンドリは高度な飛翔能力に特化した鳥です。海鳥とはいえ、羽の撥水能力が悪いために、水面に降りることはなく、常に飛びながら餌を得る必要があります。
全身が黒く、群れを成して鋭く飛び、他の海鳥の餌を奪う姿から、軍艦鳥(グンカンドリ)と名付けられました。
グンカンドリは水面ギリギリの低空飛行にも長けていて、水面を飛び跳ねる魚などを鉤状のくちばしで掬い取るように採食します。
赤い喉袋による求愛行動
グンカンドリといえば、赤い喉の袋が特徴的です。この赤い喉袋はオスが持ち、求愛行動だけに使われます。繁殖期にあたる2~7月には、オスはサッカーボールほどに膨らむ赤い喉袋を膨らませて、頭上を飛ぶメスの注意を惹きます。
グンカンドリは一回の繁殖で一つだけの卵を産みます。オスとメスの共同作業で数カ月間かけて幼鳥を育てます。
ガラパゴス諸島に生息する2種類のグンカンドリ
ガラパゴス諸島には2種類のグンカンドリが生息しています。アメリカグンカンドリとオオグンカンドリです。
この2種類を見分けるのは難しく、小さないくつかの違いで判断することになります。
★下記のように、「幼鳥」と「成鳥」で特徴が異なります。
①幼鳥
ガラパゴス諸島には外敵がいないことから、グンカンドリの幼鳥は灌木の茂みに少し木の枝を積み上げた簡単な巣にいます。
成鳥は真っ黒ですが、幼鳥は真っ白です。アメリカグンカンドリは全身が真っ白ですが、オオグンカンドリは頭に褐色の部分があります。
②成鳥
オスのような赤い喉袋を持たないメスは、目の縁で判断できます。眼の縁に特に色が無いのがアメリカグンカンドリで、赤いラインで目が縁取られているのがオオグンカンドリです。
オスで判断するときには、背中の色で判断します。アメリカグンカンドリは真っ黒ですが、オオグンカンドリはよく見ると背中の黒色は少し緑がかっています。
絶滅の危機に瀕するアメリカグンカンドリ
グンカンドリは高度な飛翔能力を持ち、約200kmの飛行が可能で、上昇気流に乗れば2000mまで上がることができるそうです。
そのため、グンカンドリは南北アメリカ大陸に広く分布していますが、ガラパゴス諸島に生息するアメリカグンカンドリは数十万年の間、大陸のグンカンドリと交流していないと言われています。
遺伝的特異性のあるガラパゴス諸島のアメリカグンカンドリですが、その生息数は約2000羽ほどで、絶滅が懸念されています。