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ポリネシア文化圏の東端:イースター島
太平洋の孤島イースター島は、南米チリに所属しますが、文化は完全にポリネシアに根差します。
イースター島は南米のラテンではなくポリネシアなのだと、空港を降りた瞬間に五感で感じるでしょう。
太平洋に囲まれたイースター島の空気はどこまでも澄み渡り、一日もいるとそののんびりとした雰囲気にすっかり身も心もほぐれるほどに平和な島です。
イースター島の象徴・モアイ
イースター島を象徴する「モアイ」は、“古代文明の遺跡”というイメージがありますが、その起源は割と新しく、300年ほど前までは島中に林立していました。百体以上のモアイが倒されて文明が崩壊した大きな原因は、木の伐採による木材資源の枯渇にあったと言われます。
かつて島を覆っていた森は、文明発展による人口増加とともに約800年ほどでほぼすべてが失われてしまいました。この800年は競うように島中でモアイを建造した時期でもありました。文化の絶頂の時期にはすでに崩壊は始まっていたのか、あまりにも急激に登場して、はかなく消えてしまった文明なのです
イースター島を覆う草原とユーカリの木
イースター島に草原が広がる理由は、そのモアイ建造時代の乱開発によるものです。かつてイースター島は森で覆われていたと言われますが、人口増加とともに森は一気に減少していきます。
人口を支える力を失った島では、食料不足により約300年ほど前に内戦が勃発。島中に建っていたモアイは倒されてしまいました。
最後のモアイが倒された頃にイースター島を訪れたヨーロッパの探検隊は、悲惨なほどに貧しい人々の姿を記録に残しています。
今では、ユーカリの植林により、島中にユーカリの木が生えますが、この100年ほどで植えられた外来種の森なのです。
イースター島最高峰テレバカ山:洋上の絶景の山
イースター島では、モアイ観光するだけではなく、ハイキングで歩くことで、より深く島を感じることができるでしょう。
イースター島は火山の島です。コニーデ型の死火山がいくつもあります。思った以上にイースター島は大きな島で起伏に富んでいます。いくつもの火山がある中で最も高い山が、テレバカ山(511m)です。
標高の低い山ですが、それでも標高50mほどの登山口から歩くと、往復約3.5時間ほどの行程です。
登山口は、イースター島で唯一“内陸にある七体のモアイ”「アフ・アキビ」です。モアイといえば、海とセットのイメージが普通ですが、アフ・アキビでは森の中に見ることができます。
ユーカリの森を抜けるとすぐに視界は開けて、畑が広がります。スイカ畑、パイナップル畑、タロイモ畑など、遠くにはいくつもの火山が見えるでしょう。
太平洋から流れ来る雲は、勢いよく草原と火山の上を流されていきます。畑を越えてさらに登ると山頂までは延々と草原が広がります。
眼下にイースター島唯一の村・ハンガロアが見えてくると山頂はすぐそこです。太平洋の深く青い海を望み、草原に吹き渡る風を感じながら、水平線を望むのはなんとも気分が良いものです。
眼下の海岸線のいたる所にモアイが散らばることを考えると、ぞくぞく想像力を掻き立てられます。この小さな孤島に現れた特異な文明は一気に花を咲かせ、わずか三百年前にモアイを残して消失してしまった。その不思議なドラマは草原の静寂に身を任せると、なお一層身に深く染みるものです。
草原の小さな小山ですが、この山に登るのと登らないのでは、五感で感じるイースター島は全然違うものとなるでしょう。