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原題「The Last Suit」の由来とは
年末から上映されている、スペイン・アルゼンチン合作の映画「家へ帰ろう」(原題「The Last Suit」)が好評なので、シネスイッチ銀座に観に行ってきました。
この映画は、ユダヤ人としての過去を引きずるアルゼンチン人・アブラハムが、人生最後の旅として、アルゼンチンから、スペイン、そして故郷ポーランドを目指すロードムービーです。
ブエノスアイレスに住む88歳のアブラハムはスーツの仕立て屋です。彼が最後の仕事として仕立てたスーツを、かつて70年前にポーランドのホロコーストで生き別れた親友にこのスーツを渡すことが、最後の旅の目的でした。映画の原題「The Last Suit」は、この旅の目的である「最後のスーツ」を題名にしたのです
片道切符の旅がもたらす“救い”
ヨーロッパから離散したユダヤ人は、北米を始め、アルゼンチンにも多くの移民がやって来ました。祖国イスラエルが抱える地政学的なリスクもあり、今でもユダヤ人のアルゼンチンへの移民の数は増えているそうです。常に危険に晒されてきたユダヤ人にとって、南米大陸は重要な安全地帯です。
アルゼンチンに根を下ろしたアブラハムを、思い出したくない過去の土地であるヨーロッパへと向かわせる原動力はいったい何なのか。頑な思いで固まるアブラハムは、旅で出会う人々を通して徐々に心を開いて行き、「最後のスーツ」を親友に渡すという目的を越えた、心の昇華、あるいは救いの過程が映画のテーマなのかもしれません。
現実的な目線でときにドライなタッチで描きながらも、希望を失わせない温かな映画です。旅とは、行き先の景色を見ることよりも、実は人との出会いが重要になったりします。ロードムービーという手法を通して、人間の“救い”を見せてもらった気がしています。
魅力的な俳優陣
映画の主人公アブラハムを演じるミゲル・アンヘル・ソラは、アルゼンチンの俳優です。アルゼンチン訛りのスペイン語で渋い色気とともに演じています。アルゼンチンでは有名な俳優であるそうです。
そして、映画で好演するのは、旅先で出会う脇役たちでしょう。なかでも、スペイン・マドリッドの安宿の女将マリアを演じるアンヘラ・モリーナは、スペインの有名な女優です。バーで哀愁の漂う大人な歌を披露して、すっかり魅了されてしまいました。