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風景写真家・松井章のブログ

アタカマ砂漠の花園:エルニーニョ現象と生命の連鎖 3つの不思議

アタカマ砂漠に出現するわずか10日間の奇跡

世界が花に包まれるような異次元的な絶景を想像できるだろうか。
砂漠の花園、「フラワーリング・デザート」は世界にいくつかあるが、チリの花園はその規模と希少性で、最も珍しい花園と言ってよいだろう。
砂漠は地平線まで花に覆われて、空気の組成さえも変わってしまう。花園に入ると、花の香りに包まれている。それは香りというよりは、花が分泌する何かが空気そのものに溶け込んでいるというべきだろう。

チリ北部のアタカマ砂漠は世界で最も乾燥した大地として有名だ。荒涼とした土漠は日本列島を覆うほどの規模で、月面世界のような風景がどこまで果てしなく続く。
この荒涼とした大地が、3~4年に一度、わずか10日間だけ、花に覆われる。地平線まで花畑が広がり、砂漠は紫や藤色に輝いてみえるほどだ。国内線がここに着陸するときには、空から紫に輝く砂漠に驚かされる、そして飛行機は花畑の空港に着陸するのだ。

この奇跡のような絶景「フラワーリング・デザート」は、10日間もすると消滅して、月面世界の荒野に戻ってしまう。

不思議①:エルニーニョ現象と花畑の関係


3~4年に一度だけ出現する花畑は、エルニーニョ現象と深く関係している。
ペルー・チリ沖の太平洋上で発生する“エルニーニョ現象”は、だいたい3~4年に一度の間隔で発生する海水温の上昇現象だ。この海水温の上昇は、世界の気象に大きな影響を与える。海流はベルトのように世界海を繋げているので、海水温の変動は海流というベルトに大きく影響することで、間接的に世界の気象にも影響する。

エルニーニョ現象という不確定に発生する自然現象に託したのが「砂漠の花園(フラワーリング・デザート)」だ。エルニーニョ現象の有無は、砂漠の花園に関わる生態系の存在に関わる。一つの自然現象に、ある生態系の生存のすべてを懸けるというのは、大胆な生命の選択というべきだろう。

不思議②:何年も水を待つ花々の種子


雨が降れば、すぐに花が咲くと考える人もいるが、実際に重要なのは長い時間をかけて蓄積する水の量だ。突然に大雨が降れば、花も一気に芽吹くというものではない。なので、何日かそこに水を撒けば花が咲くというものではないのだ。
エルニーニョ現象とともに太平洋から流れてくる「霧」が、霧雨のような雨をアタカマ砂漠にもたらす。その降水は定期的に水に染み込み続けることが重要だ。種を取り巻く土壌に、ある期間にある量の水が貯まったときに、大地に眠る種が目覚めるのだ。

広大な砂漠で一斉に芽吹くと、葉を茂らせるよりも早く茎を伸ばして、花を咲かせる。砂漠が花の色に包まれる理由は、葉が少ないことにあるだろう。葉を茂らせる時間がないほどに短期間に芽吹き、開花し、受粉する。

芽吹きを待つ花の種子は、30年あまり水を待つことともあるようだ。花の種は長い目で芽吹きを待っている。数千万、数億という種子が、まるで示し合わせるかのように同時に咲き乱れるのは、人智を越えた不思議というほかないだろう。

不思議③:花ととともに現れる蝶


花畑とともに発生するのが大量の蝶だ。花の受粉を助ける蝶の存在は、花にとって欠かすことのできない存在だ。この蝶にとっても、砂漠で生命を繋ぐために、数年に一度だけ出現する花は必須であり生命線だ。
蝶もまたエルニーニョ現象の到来による花の開花を待ち、同時発生する。花園にいると無数の蝶が舞っているのだが、花が無ければ彼らも生存することができない。

花畑の出現しない数年の間は、蝶もまたどのように砂漠を生き抜いているのだろうか。

YouTube動画:南米絶景動画チャンネル「アタカマ砂漠の花園」

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3~5年に一度だけ、わずか10日間だけ出現するアタカマ砂漠の花畑が、いま満開とのことです。エルニーニョ現象と生命が生み出す奇跡の自然現象について

【悠久の南米大陸】NHKラジオ「まいにちスペイン語」8月号:アタカマ砂漠の花畑

アタカマ砂漠を代表する花:パタ・デ・グアナコ

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アタカマ砂漠の花:ススピロ(ナス科ノラナ)

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