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南米大陸の秘境・アタカマ高地へ
南米大陸で最も人口の希薄なエリアといえば、パタゴニアとアタカマ高地、そしてアマゾンではないだろうか。
アタカマ高地とはあまり知られていない地名だが、アンデス高原というと少し分かりやすい。北端はボリビア・ウユニ塩湖で、南端は国境を越えてチリ北部のサンペドロ周辺までを「アタカマ高地」と呼ぶ。ボリビア側のアタカマ高地は特に標高が高く4000~4800mの高原(アルティプラーノ)だ。この広大な高地に宿は数軒しかなく、月面世界のような荒涼とした景色がどこまでも広がる。
月面のような荒野:シロリ砂漠
特に人の痕跡の無いエリアが、ウユニ塩湖以南に広がるボリビア側のシロリ砂漠だ。4WDで2~3日かけて周遊するのだが、ほとんど人を見ることがない。そんな辺境の砂漠でも、ときおりリャマやアルパカを放牧する地元の人々見ることがある。どうしてこんなところに、人々は生活を営々と続けているものなのか、ばったりとすれ違った奇跡のような巡り合いに感動すらしてしまう
月面世界のような砂漠にときおり巨大な湖が現れる。規模の大小も様々で色もまた様々だ。標高4500mを越えると風は一際冷たく、昼間でも凍り付いた氷瀑を目にする。厳しい環境に適応した灌木やクッション植物と呼ばれる高所独特の植物だけが生きる過酷な世界だ。
アタカマ高地では、星空もまた美しい。アルマ展望台があるのもアタカマ高地だ。標高4500mの高原の宿に泊まり、凍てつく夜に見上げた満点の星空は一生忘れないだろう。天の川はどんどん動き、星のきらめきが砂漠を煌々と照らしている。
エドゥアルド・アバロア自然保護区
シロリ砂漠を抜けると、チリ国境部のエドゥアルド・アバロア自然保護区に入る。この地域で有名なのは、間欠泉や奇岩地帯、そして赤い湖(ラグーナ・コロラダ)と緑の湖(ラグーナ・ベルデ)だ。
ラグーナ・コロラダは、水が真っ赤に淀んでいる。この赤は水中のプランクトンの繁殖によるらしく、その捕食のためにフラミンゴが集まっている。
ラグーナ・ベルデは、水中に溶けたミネラルの影響で緑色を宿している。背後はチリ国境線としてチリ側からも望めるリカンカブール山が独特な円錐形で佇んでいる。
チリ側の基点:サンペドロ・デ・アタカマ
荒涼とした悪路が続くボリビア側から国境を越えてチリに入ると、一気に標高は下がり道路も整然としたアスファルトで驚くことだろう。1時間もすると、標高2500mのチリ・アタカマ高地の基点サンペドロに到着する。
かつて約130年前に、ボリビアとチリの間で起きた「(南米の)太平洋戦争」でボリビアは敗北して、この地をチリが獲得したことで、ボリビアは海への出口を失ってしまった。この戦争はボリビアにとってとてつもない損失で、今日のボリビアの貧困に繋がることになる。
近年の民族主義的なエボ・モラレス政権になってから、この地を奪還しようという動きもあるのだが、チリからすれば笑止千万というところで、この国境問題はすでに解決済みとされている。強い者が正しいという国際政治の冷徹な現実だ。
サンペドロ周辺には、世界第二のアタカマ塩湖や間欠泉、月面のような月の谷があり、ボリビアよりも落ち着いた気候ということもあり、観光地として栄えている。ボリビア国境を越える場合には、車両を遠くウユニ塩湖から呼ぶ必要があり、大きなコストがかかるので、旅費を節約する場合には、サンペドロ周辺だけでも十分に魅力的だ。
ラグーナ・ベルデにそっくりのミスカンティ湖では、ラグーナ・ベルデよりも深く緑色で背後に見事な円錐形の火山を望めるのだ。