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風景写真家・松井章のブログ

エルニーニョ現象:「アタカマの花園」と「ビクーニャ」への影響

今年のエルニーニョ現象

今年は“スーパー・エルニーニョ”とも呼ばれる強力なエルニーニョ現象に、世界中が翻弄されている。

エルニーニョとは、スペイン語で「El Niño」と書き、「神の子(=キリスト)」を意味する。

海水温の異常な上昇によって、ある地域では奇跡のような景観を生み出し、ある地域には災禍をもたらす。

2015年に現れた「アタカマ砂漠の花園・デシエルトフロリド」

2015年のチリ・アタカマ砂漠では、「砂漠の花園・デシエルトフロリド」が数十年に一度という規模で現れた。

エルニーニョの出現に合わせて約5年に一度の約2週間だけ、世界で最も乾燥したアタカマ砂漠に「花園」が現れる。
チリでは「デシエルトフロリド」と呼ばれて親しまれている。日本語に訳すと「砂漠の花園」という意味だ。
アタカマの花園の花は全てワイルドフラワーだ。砂漠一面がワイルドフラワーでピンク色に染まる。

今年の3月に日本のニュースでも話題に出たアタカマ地方の大洪水は住民に大変な災禍をもたらしたが、広範囲に種を流したことで近年で稀に見る花園が生まれるきっかけを作った。
エルニーニョ現象がもたらす霧と雨は続き、大地に眠る種子の眼を覚ますことになり、一年の内に2回も花園が現れる奇跡のような現象が起きたのだ。
特に9月に現れた花園は、その規模で数十年ぶりと言われるほどであった。

野生のラクダ・ビクーニャにも及ぶ気候変動の影響

一方、標高4,000mを越えるアンデス高地は旱魃となり、ビクーニャの毛の収穫に影響を与えている。

世界で最も高級な毛が取れることで有名なビクーニャは、アンデス山脈の4,000m以上の高原に生息する。人に懐かない性格から飼育・放牧はできず、毛を刈るためには野生のビクーニャを捕まえる必要がある。

今年は旱魃であまり牧草が少ないために、ビクーニャの群れは例年とは違う地域にまで移動しているようだ。
これは毛の収穫を待つ地元村民にとっては非常に痛手となる。いつもいるはずのビクーニャが今年は消えてしまったので、毛を収穫することができないからだ。

来年まで続くと言われるエルニーニョの影響で旱魃が続けば、その生息数にも深刻な影響をもたらすだろう。

コインの表裏のように各地域で対照的に現れる災禍と豊穣は、海流という巨大なベルトコンベアに乗って世界中に拡散されている。

【動画】砂漠が花に覆われる:チリ・アタカマ砂漠の絶景

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