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カスティーリャ地方のスペイン語:カステジャーノ
16世紀に新大陸に波及したスペイン文化は、今日の南米大陸に「スペイン語」という共通言語をもたらしました。スペイン各地方からの移民が中南米各国の中枢を形成する中で、中南米ではスペイン語が「カステジャーノ」と呼ばれるようになります。
「カステジャーノ」とは「カスティーリャ地方のスペイン語」という意味で、マドリッドを中心とするカスティーリャ地方の本場のスペイン語を話すという意味合いの意思表示で、中南米では「スペイン語=カスティーリャ語」と表現するようになったのです。
この「カステジャーノ」というスペイン語の最も分かりやすい特徴は、「LL」の発音が「リャ・リュ・リョ」ではなく「ジャ・ジュ・ジョ」であることでしょう。「カスティーリャ」は「カスティージャ」であり、「カステリャーノ」ではなく「カステジャーノ」と発音します。
中南米各国の独特なスペイン語の訛り
スペインが新大陸に進出して500年を経る中で、この「カステジャーノ」も各国で別々の進化を遂げることになりました。国により発音が異なり、抑揚やスピードまで、国や地方によりスペイン語は多様に分化しました。
その中で、メキシコやグアテマラ、ペルー、エクアドルのスペイン語はスペインのスペイン語に近いことから、これらの国にはスペイン語の語学学校が多いです。
イタリアの色濃い影響:アルゼンチンのスペイン語
中南米でも特に訛りの強い国として有名なのがアルゼンチンです。人口の90%以上を占めるヨーロッパ系の中で、スペイン系に次いで多い移民がイタリア系でした。このことから、アルゼンチンのスペイン語にはイタリア語が大きく影響しているのです。
専門的には、ブエノスアイレス周辺のラプラタ川(リオ・ラ・プラタ)周辺の方言として「リオプラテンセ・スペイン語」と呼ばれます。
中でも分かりやすいのは、その抑揚・リズムの違いです。その多分に感情移入した抑揚の強弱はまるで歌っているかのようで、中南米でも独特なアルゼンチンらしいスペイン語です。
また、「LL」の発音が「リャ・リュ・リョ」でも「ジャ・ジュ・ジョ」でもなく「シャ・シュ・ショ」と発音します。このことを知らずにアルゼンチンに行けば、スペイン語を聞き取れずに最初は少し面食らってしまうでしょう。
アルゼンチン語を代表する表現では、二人称「君」を「Tu」ではなく「Vos」と発音する、いわゆるアルゼンチン独特の「vosear」という動詞の活用です。
少し専門的ですが、下記は「二人称単数形」の動詞の活用例で、動詞の最後にアクセントが来るのが特徴です。命令形でも同じルールが適用されます。
・AR動詞(tomar):(スペイン語)tomas →(アルゼンチン語)tomás
・ER動詞(comer):(スペイン語)comes →(アルゼンチン語)comés
・IR動詞(salir):(スペイン語)sales →(アルゼンチン語)salís
この違いが分からないと、なかなかアルゼンチン語ともいうべきアルゼンチンのスペイン語は理解できなかったりします。
アルゼンチン独特の表現「チェ」とゲバラ
アルゼンチン人の会話でよく耳にする「チェ」という呼びかけの言葉は、アルゼンチン人のシンボルとも言える単語です。相手を呼ぶときや、会話の繋ぎの言葉として、アルゼンチンでは「チェ」という単語が会話の中に頻繁に登場します。
この「チェ」という言葉は、その他の中南米では使われない言葉ですので、すぐにアルゼンチン人として特定されます。
一番有名なのは、アルゼンチン人である「チェ・ゲバラ」の逸話でしょう。ゲバラのフルネームは、「エルネスト・ゲバラ」で、ゲバラは苗字です。スペイン語でお互いを呼び合う場合には、ファーストネームのエルネストで呼ぶはずです。
キューバ革命に参加したゲバラが、キューバ人の仲間と活動する日々で、アルゼンチン訛りの「チェ」をしきりに口にすることから、エルネストではなく「チェ」と愛称で呼ばれるようになりました。
後にチェ・ゲバラは神格化されて、「チェ」の上に定冠詞を付けて「エル・チェ」と呼ばれることになります。
この「チェ」という表現は、スペイン・バレンシア地方からもたらされたと言われています。バレンシア近辺のカタルーニャ地方では同じような表現があり、かつてスペイン内戦の時代にバレンシアから多くの移民がブエノスアイレスにやって来たことが「チェ」の起源のようです。
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