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氷河に覆われるパラダイス湾
南極半島の風景は、氷河に削られた荒々しいフィヨルドが特徴です。
なかでも、多くの船が訪れるパラダイス湾は美しい場所です。
パラダイス湾は、20世紀初頭に捕鯨船の休息地として利用されていたときに名付けられました。
入り組んだ入り江では海が荒れることはなく、きっと理想的な休息地となったのでしょう。
私が訪れたときは、湾の奥に入ると、水面は凪いで鏡のように静かでした。
氷河から崩れ落ちた氷塊がいたるところに浮いていて、見上げるほど高くまで山々は氷河に覆われています。
山と氷河は分厚い雲に覆われていて、その上部を見ることはできません。
空が見えないことで、周囲の世界はグレイシャー・ブルーの色に包まれて幻想的です。
パラダイス湾の畔にあるのが、アルゼンチンのアルミランテ・ブラウン基地です。
基地の屋根は、アルゼンチンの国旗のデザインに塗られていて、遠くからでもアルゼンチンの基地であることが分かります。
その背後には、基地に覆い被さるほどの迫力で、山から流れ落ちる氷河が迫っています。
この日、自分たちの存在以外には、生命の気配がまったくしない静かな日でした。
水面を見つめると、海水の表面が急速に冷えて凍り始めていました。
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