ニューマイヤー海峡に入ると、船の揺れは収まり、海は次第に穏やかになって行った。
まるで湖のように海が静まると、曇天の空を反映してか、海は不気味に漆黒ともいえる黒さをたたえてきた。
午前中の晴れ間では海はどこまでも深く青かったのだが、ニューマイヤー海峡の曇天の下では一変して深く黒い。
穏やかな海といえでも、船にはけっこう風が吹き付ける。とても冷たい風で何枚着こんでいても、体に染みて来るような寒さだ。
狭い海峡に入り始めると、氷塊がたくさん見えてきた。
船首から見ると、まるで前方は氷塊で塞がれているようだ。
案の定、艦内に放送があり、前方は氷塊に阻まれて進むことができないので、別のルートで行くと伝えられた。
目指すポート・ロックロイは、ニューマイヤー海峡を通過しなければ、大回りすることになり、予定は大きく変わることになるだろう。
一度Uターンした船はしばらくすると、再びUターンしてニューマイヤー海峡に向かい始めた。
やはり通過できるようだ、という少し心配な放送の後、船はニューマイヤー海峡に再び入り込む。
実際に海峡に入り、いくつかの大きな氷山を回り込みながらも、順調に進むことができた。
予定より2時間ほど遅れていたが、ポートロックロイが近づいてきた。
ポートロックロイはイギリス軍基地があり、ここには郵便ポストがあることでも有名だ。
==連載・探検船で行く 南極クルーズ==