目次
ダンコ島の展望台から、南極の絶景を一望する
ネコハーバーでキャンプした翌朝は、厚い雲に覆われて完全に曇りであった。
低く下がってきた雲から一日の天候を示唆されているようであったが杞憂に過ぎなかった。
朝6時にはキャンプを撤収して、クルーズ船に戻ると、ミンククジラが船の横に現れた。
まるで倒木のようにじっとして動かないまま、30分は同じ場所に浮かんでいただろう。
朝食の時間の頃には、船は次の目的地に動き始めた。
2日前のクーバービル島の近く、ダンコ島を向かう。
ダンコ島に上陸すると、標高300mほどの小さな丘の山頂部を目指して、ハイキング(トレッキング)開始だ。
この島もやはり巨大なジェンツー・ペンギンの集団営巣地(ルッカリー)だ。
上を見上げれば、どこまでもペンギンが見える。
ときおり雪に覆われている箇所には、たいてい「ペンギンの道」がある。
ペンギンも、ヒトと同じく、上へ上へ目指すのだ。
「ペンギンの道」に踏み込まないように気を付けながら、岩場で営巣するペンギンや、登山を続けるペンギンを抜かしながら、山頂を目指した。
景色の良い岩の上には、必ずペンギンが場所を競うように集まっている。
なかには、小石を集めた巣で、小さな雛を抱えているペンギンもいる。既に盛夏を迎える時期としては子育てにはきっと遅く、次の秋や冬の移動には間に合わないのではと思えた。周りに雛鳥は活発に動いているなかで、ちらほらとまだ小さい生まれたての雛鳥を温めているペンギンもいた。
気が付けば、雲に覆われていた空から陽が差し始め、海は深く青く、浮かぶ氷塊は見事なグレイシャーブルーに照り始めた。
クルーズ船のカヤック・チームは、氷塊の間を木の葉のように、気持ちよさげに漕ぎ進むのが見えた。