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クーバービル島にて-探検船で行く南極クルーズ-
アザラシの楽園となっている氷塊の間をさらに進むと、氷塊の量もさらに増えて、ゾディアックボートは不思議な空間へと入っていく。
背の高い氷塊はまるで柱のようで、その氷柱は10mほども聳えていたりする。
近くの氷河から崩れ落ち流されてきたであろう氷塊は、陽に当たり、驚くほどに青く輝く。
どこまでも透き通るように深く透明な青は、それだけ密度が濃く硬い氷である印だ。
数千年・数万年と南極大陸の氷河の中で、圧縮され鍛錬された末の「青」なのだ。
無風で快晴の穏やかな天気であったが、氷塊の集まる水域に入ると、音さえもさらに無くなり静寂に包まれる。
無音の水域で息を潜めるように進むと、しだいにゴォゴォという唸り声のような音が聞こえてきた。
氷塊の上で眠るアザラシの音ではない。
凪いだ水面をじっと見つめると、音の持ち主が見えてきた。
アザラシが水中でゴォゴォと盛大ないびきを立てて眠っていたのだ。
鼻だけを水面に出して、立つようなにして眠っているわけだが、アザラシの体は小さく水面を上下する。
ときおり水面下に鼻が潜ると、溺れそうにボゴボゴと音を立てるが、起きる気はないようだ。
しばらくアザラシが水中で眠る様を見た後で、氷塊の幻想的な回廊とも呼ぶべき空間を出て、船へと戻る。
長い午前中の遊びをようやく終えて昼食の時間だ。
昼食の間に、クルーズ船はネコハーバーへと向かう。