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サウス・シェットランド諸島にて -探検船で行く南極クルーズ-
最初にヒゲペンギンを見たのは、やはり南極の入口であるサウスシェットランド諸島のリビングストン島であった。
その姿を見るにつけ、“言い得て妙”であると思う。
喉下に通る帯模様をあごひげに見立てて、「ヒゲペンギン」と名付けられたわけだが、
英語名では“チンストラップ・ペンギン”と呼ばれる。
チンストラップとは、“アゴヒモ”という意味だ。
いずれにせよ、このような顔をした、ヒゲペンギンの近縁のような人は、周りに一人はいるのではないだろうか。
見た目の通りに、まるで修行僧のように佇んでいて、寡黙でどこか眠たげである。
ジェンツーペンギンがバタバタ動き廻るのに比べて、ヒゲペンギンの動きは極めて少なく感じるのだが、その印象には大きく“見た目”が影響しているだけかもしれない。
その見た目に反して攻撃的な性格らしいのだが、慌ただしいジェンツーペンギンに比べてとても落ち着いていた。
南極大陸にいよいよ上陸してからも、ジェンツーペンギンが大いに繁栄しているのに比べて、ヒゲペンギンは希少であった。
その存在感は誇り高い少数民族のようで、徐々に気高ささえも感じられてきて、
ヒゲペンギンには密かに敬意すらも感じていたものだ。