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風景写真家・松井章のブログ

南極ゾウアザラシのハーレム:サウス・シェットランド諸島にて

圧倒的な南極大陸の氷の世界の前に -探検船で行く南極クルーズ-

南極大陸の白と青の氷の世界を前にして、最初に上陸するサウスシェットランド諸島では、意外にも多くの沿岸部で陸地が露出している。
「南極はこんなものか」と早とちりしてしまうだろうだが、そのぶん翌日からは南極らしい絶景に驚愕することにもなるだろう。
上陸したリビングストン島では、ペンギンとゾウアザラシが景色の主役だ。
南極では少ないその露出した陸地は、野生動物にとっては貴重な住処となるのだ。

サウス・シェットランド諸島にて ゾウアザラシのハーレムへ

ジェンツーペンギンのルッカリー(集団営巣地)を抜けてしばらくビーチを歩くと、遠くに巨大な“何か”が見えてきた。
頭陀袋を積み重ねたような“何か”に近づくと、ゾウアザラシのハーレムであることに気づいた。
ゾウアザラシは野太い声で唸りながら、積み重なるように集まっている。
オスを中心にメスが群れを成す“ハーレム”だ。

オスがヒトを威嚇するためなのか、それとも他のオスを威嚇するためか、時には天に向かって大きく吠える。
あるいは、もしかしたらただ空に吠えたかっただけなのかもしれない。
そして、その巨体の体重を支え切れずにすぐにドスンと倒れる。

体長4mほど、体重500kgほどのゾウアザラシには大きな存在感がある。
獰猛で近づきがたい雰囲気を出しながらも、しばらく見ていると実に愛くるしい顔をしていることも分かるだろう。
海の中ではきっと極めて有能に素早く動くハンターなのだろうが、陸上では1m進むのも実に大変そうだ。
地面を這うゾウアザラシの無防備な姿を撮影していると、ゾウアザラシはピタリと止まり振り返り、私と目が合った。
大きく黒い目からは、近づくヒトがいったい何者なのか怯えるような気持ちが伝わってきた。
巨体が醸し出す粗暴な雰囲気とは異なる、野生動物に独特なあるナイーブな瞬間をかい見ることができた気がする。

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