パラダイスハーバーを奥へと入り込むと、小さなヨットが停泊していた。
凪いだ水面は鏡のように反射していて、氷河を背にするヨットの光景はあまりにも非現実的で目を疑う。
この小さな船でドレーク海峡を越えてきたのだ。
船内から中年の男性がジャケットのポケットに手を突っ込んだまま、こちらを無関心に見ていた。
無音に静まりかえった湾内をゾディアックボートで移動していると、ヨットの他の持ち主たちが見えてきた。
3人の男女が巨大な氷河のすぐ目の前に上陸して、氷河の末端部を写真撮影していた。
わずか4人で小さなヨットを操船して、南極にやってきたのだ。
畏敬の念を冒険者たちに抱きつつ、我々のゾディアックボートは、青い青い氷河と鏡張りの水面が織りなす絶景に息の飲みながら見物を続けた。