巨大なアコンカグアの迫力を前に、山々の展望に目を奪われるが、ふと目を地面に落とせば、そこには花々の世界があった。
2月のアコンカグア山麓は盛夏で、花の季節は過ぎているが、それでもあちこちに花が咲いている。
一番目を引いたのは、シレンゲの白い花だろうか。びっしりと細かい針に覆われた少し危険な花なのだが、標高3500m~4000m付近の乾ききった荒野では、シレンゲの花を見るとホッとしたものだ。強烈な直射日光と乾燥を少しでも避けるかのように、岩陰から顔をのぞかせるように咲いていた。
シレンゲの咲く斜面には、レンゲソウの仲間も赤く派手に目を引く。すでに花は豆果(豆のさや)に変化していたが、風にかさかさと揺れる豆果が、よく見れば地面の至るところに成っていた。
自己主張するレンゲソウの深紅とシレンゲの白は、高所の乾燥した原野で「一服の涼」と言える存在であった。
キクの花は可憐だった。岩場で慎ましく一輪一輪の花を咲かせている。ちょうど手のひらで包めるほどに葉とともに球形であった。
標高を少し下げて、登山口付近で目立った花は、ノウゼンハレンの花だろう。黄色い花は勢い良く、盛夏を満喫しているようだった。
アコンカグアのトレッキング・シーズンは短く、12月~3月のわずか4か月だ。その中で花が最も咲く時期が12月の初夏から2月の盛夏にかけてだろう。
南米最高峰の雄姿とともに、花の観察も楽しめる余裕のある日程で訪れたい場所だ。