ヘルシンガー牧場は部屋数が極端に少ないので、滞在中はそのわずか十数人ほどの宿泊者で、敷地内の自然を独占することになる。
パタゴニアといえども、絶景のある場所には人はたくさんいるものだが、ヘルシンガー牧場では人のいない静寂な本来のパタゴニアの姿に身を置くことができるのだ。
パタゴニアの氷河と山と風の織りなす風景を満喫して、ビエドマ湖南岸を東へ、国道40号線を目指す。
国道40号線までの40分ほどの区間は、2・3のエスタンシアのためだけにある道路だ。だから、他の車にすれ違うことは、めったにないだろう。
左後ろ、ビエドマ湖の対岸に、フィッツロイとセロトーレが見える。ビエドマ湖越しに遠望するフィッツロイは、チャルテンから望む時とは違った良さがある。フィッツロイ遠望も魅力的なのだ。
見慣れている山なのだが、繰り返し何度も振り返り、少しずつ小さくなるフィッツロイを飽きずに眺めていた。