夕方の風は、骨身に染みるように冷たい
パタゴニア大陸氷床で、セロトーレ直下からの風を楽しめる余裕があるのは一つの幸運だ
世界でも稀にみる悪天候のまさに核心部にいるからだ
氷河源流部の氷は圧縮されて硬く密度が濃い。氷河は、セロトーレから吹き飛ばされた砂利で薄く覆われているが、砂利の間にときおり穴を見つける。
その穴は、深く深く青い。透明で底の石が見えるが、どのくらいの深さなのか見当もつかない。じっと見ていると吸い込まれそうに危うく感じてしまう。
このような清冽な水をたたえた泉は、氷河からの贈り物と言ってもいいだろう
コップで掬い取り、水を飲めば、体中が喜んでいるようで溜息が出る。
セロトーレを見ながら、水を飲む幸せ。
その時は間違いなく、あの水は世界で一番美味しい水であった
水筒をこの水で満たすと、何とも言えぬ満足感で夜を迎えられた