チャルテン村から車と船を乗継ぎ、約一時間ほどの距離にあるのがビエドマ氷河です。アルゼンチン・パタゴニアでは最大の面積の氷河で、セロトーレの裏側の源流部から始まります。
幅が約3kmの末端部は、ペリトモレノ氷河同様に高さ40mほどの氷壁がズラリと並び、春から秋にかけて気温が高い時には氷壁が轟音を立てて崩れ落ちます。
ペリトモレノ氷河が前進も後退もなく過去数十年に渡り安定を続けているのに対して、ビエドマ氷河は後退のスピードが著しい事で有名です。20年前には氷河の下にあった広大な岩場を見れば、その後退のスピードの速さを感じるでしょう。
ビエドマ氷河は下流域から末端部にかけて、特に氷河が激しく割れています。これは氷河の下の岩盤が起伏に富んでいることから、氷河の上下動が大きくなるので割れるそうです。
後退した氷河の跡に残される岩盤は、表面はつるつるです。これは厚い氷河に数万年も磨かれたためです。歩くと分かりますが、油断すると転んでしまうほどに磨かれています。
この岩盤の表面を見ると、するどい筋を何本も見つけます。これは“擦痕”というものです。厚い氷河から徐々に下層に押し込まれ、ついに下の岩盤にぶつかると、氷河と岩盤の間でひきずられながら進んでいきます。この氷河による傷痕が“擦痕”です。痕を見れば、かつての氷河がどの方向に進んでいたかが分かります。
氷河と下の岩盤の間で引きずられるほどに固い石の素材は、花崗岩です。ビエドマ氷河で言えば、源流域のセロトーレ付近から落下した花崗岩の岩が、数万年の時をかけて氷河の内部に取り込まれて最深部に着き、岩盤と接触したのです。
「ビエドマ氷河ハイキング」は、チャルテンでのトレッキング後に、半日を利用して体験可能です。トレッキング後は、そのままカラファテに移動するバスに連動する動きもありますので、より参加しやすくなるツアーです。
ペリトモレノ氷河とともに、ビエドマ湖でのハイキングも体験して、2つの相反する特徴を持つ氷河へ行くのは、とても意義があると思います。
氷河上では、ハイキングシューズにアイゼンを付けます。くるぶしを包むハイカットの靴であれば装着可能です。初めての方でも歩けるように、ベテランのガイドがご案内するので、安心して初心者でもご参加いただけます。
20年前まで氷河に覆われていた岩場
擦痕