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フィデル・カストロの神秘的な確信とは
「これでバティスタの命運は尽きたな。俺たちはきっと勝つ」。「グランマ号」にすし詰めで乗った82人の兵士は、キューバに上陸してすぐに待ち伏せに遭う。革命家フィデル・カストロが、生き残った十数人の兵士を前に昂然と言い放ったセリフである。「神秘的とも呼ばれるほどの確信」、この天性がフィデルをキューバ革命に導く。
ホセ・マルティに大きく影響を受けたフィデルの思想は、アメリカに搾取されるキューバ国民を解放するという「民族主義」が出発点だ。戦略家としての類まれな能力を発揮して、元弁護士のフィデルは、国をひっくり返す。ラテン・アメリカの人々にとって、「マチスモ」の象徴、それはフィデルであっただろう。
バティスタを倒し、興奮して喜ぶ民衆に彼は言う、「革命は今から始まるのだ」と。多くの同志が去り、ゲバラも去った。ある意味では、かっこ良く去った。しかし、カストロは革命を続ける。革命のためであれば、どんな犠牲もいとわない。社会正義と民族主義に立脚した理想主義を、冷徹なまでの現実主義で貫く。ソ連が運命的な腐敗の末に崩れ去ったが、キューバは踏ん張る。アメリカにより「悪の枢軸国」に加えられ、不当な経済封鎖をくらう。しかし、平等主義の名の基に教育を広め、世界でもトップクラスの数の医師を国費で育てる。国際主義を唱え、アフリカに多くの医師を派遣する。予防医学に優れ、幼児死亡率はアメリカより低い。強いいじめられっ子である。その平等主義に不満を抱く人もいるだろう。決して理想郷ではない。様々な矛盾を抱える、思想の実験場のような国である。
キューバ上陸時のわずかな生き残りの中には、フィデルをはじめ、弟のラウル、チェ・ゲバラ、カミーロ・シエンフエゴス、フアン・アルメイダがいた。革命の元勲である彼らが、この戦闘の生き残りの中に入っているのは奇跡である。キューバ革命という一つの伝説は、そのまま世界の不可解さ、未知を体現している。
革命から50年以上の時が過ぎた。85歳の巨人は休まない。
「祖国か、死か」
革命は今も進行している。