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老若男女すべての国民に愛される飲み物「マテ茶」
アルゼンチンの公園や広場に、あるいは空港やドライブインにいると、人々は肩に四角い革製のバッグを下げているのが目に付くでしょう。これは一目でその人をアルゼンチン人と識別できる重要な文化財「マテ茶セット」です。
マテ茶はアルゼンチン人にとって日常生活に欠かせない物で、職場でも友人との集まりでも必ず誰かが用意しています。
マテ茶の起源
マテ茶はアルゼンチン北部で先住民グアラニー族の文化とスペイン文化が融合して生まれた文化です。もともとはグアラニー族が、古来からマテ茶の葉を何百年もの間、主にシャーマンによる儀式での飲み物として使用してきました。マテ茶の成分には喉の渇きを癒し、食欲を抑制して目を覚ます天然カフェインが含まれているからです。
スペイン人による植民時代を経て、マテ茶はアルゼンチンの家庭に徐々に浸透して行ったのです。
マテ茶セットの中身
革製のバッグ「マテ茶セット」には、お湯を入れる魔法瓶、茶葉を入れる瓢箪(ひょうたん)のコップ、マテ茶、鉄製のストロー(ボンビージャ)、お菓子が入っています。
ドライブインなどに行くと、魔法瓶を小脇に抱えた人が、お湯を入れるためにポットの前に並ぶのを見ることでしょう。茶葉を入れるコップは、伝統的には瓢箪(ひょうたん)を好んで使います。談笑しながら回し飲むするためにテーブルに置けないように、丸い瓢箪を使うようになりました。アルゼンチン人にとって欠かせない飲み物なので、たとえテント泊登山であっても、マテ茶を持って生きます。このときの器はキャンプ用のゴム製のコップを使っています。
鉄製のストロー(ボンビージャ)は先端が膨らみ、茶葉を漉し取るための無数の小穴が空いています。熱湯でボンビージャが熱くなり、一気に多くは飲めないようになっています。
お菓子は、日本でいう3時のおやつで「メリエンダ」と呼ばれます。
マテ茶の飲み方
マテ茶の伝統的な飲み方は、まず瓢箪のコップの7~8割くらいまで茶葉をどさっと入れます。そしてストロー(ボンビージャ)を深く差し込みます。それから、熱湯を注ぎ入れます。一度お湯を入れたら、このストローは絶対に動かしてはいけません。これは伝統ですので、動かしてしまうと周囲の人は半ば絶叫しながら静止してきます。ボンビーリャの位置を動かすことで、茶漉し部分が目詰まりしたり、味の濃さが変化したりするので、ボンビーリャを動かしてはならないわけです。
このとき、人によっては砂糖を少し入れたり、オレンジの皮を入れたりします。
回し飲み「ロンダ」のコミュニケーション文化
マテ茶は一人でも飲みますが、通常は2人以上で飲みます。このとき必ず誰かホスト役が決まります。茶葉を入れて、回し飲みする時にホストが中心となります。
会話をしながら、自分のペースで飲みます。飲み過ぎないように、鉄製のストローは熱々なので、すするように少しずつ飲むことになるでしょう。飲み終えたら、ホストに返します。このとき「ありがとう」と言ってしまうと「もう結構です」となってしまうので、まだ飲みたい時には「美味しいね(Muy Bueno)」などと言いながら渡しましょう。
そうするとホストは頷きながら、お湯を注いで次の人に延々と回します。
この回し飲みのことを「ロンダ」と呼びます。
アルゼンチンではいたるところで、このロンダを見ることになります。円滑にコミュニケーションするうえで欠かすことのできない文化が、マテ茶のロンダなのです。
そして、自分がロンダに加えてもらえたならば、アミーゴ(友)として認めてもらえたと解釈して良いでしょう。
マテ茶は親密な間柄が前提となるので、異邦人がマテ茶を飲む機会はなかなかありませんが、もし地元の人に誘われたなら、喜んで参加しましょう。
少し苦みのある味は緑茶に似ているので、日本人の好む味がマテ茶です。