“ウエムル”は、パタゴニアの地元民でもなかなか出会うことのできない貴重な鹿です。
それは“森の幽霊”と呼ばれるほどで、地元民でも目を輝かせて喜びます。
村でウエムルを見たことを言えば、写真を見せるまではなかなか信じてくれないでしょう。
かつて羊が持ち込まれる前のパタゴニアにはたくさん生息していましたが、牧羊に伴う環境の変化に耐えられず激減してしまいました。
狩猟と伝染病が原因で、今では絶滅が危惧されています。
森の色に同化して静かに臆病に動くウエムルは、見つけようとしても見つけられないものです。
見ようとしていないわずかな瞬間に見ることができる、ウエムルには“森の幽霊”という呼び方がぴったりします。