ブラジル北東岸のレンソイス周辺は、インディオのあまり居住しない土地として、長く無人でした。その無人の土地に人が入り込み始めたのは、16世紀以後のポルトガルによる植民地化の頃からです。サトウキビのプランテーション開発のために、多くの黒人がアフリカ西岸から奴隷として連れてこられた時期が、レンソイス周辺部の有史の始まりと言えるでしょう。
レンソイス砂漠に人が住みつき始めたのは、約200年ほど前とも言われますが詳しくは分かりません。1820年前後のブラジルのポルトガルからの独立が関係しているのではと思います。その時代に奴隷から逃走した、あるムラート(黒人と白人の混血)が最初にレンソイス周囲のオアシスに住み始めました。その一族は今でもレンソイス周囲に住み、国立公園となったレンソイスで唯一土地を所有する人々となっています。
レンソイス砂漠を取り巻くように、オアシスに広がる緑。これらの多くが野生のカシューナッツの木です。それらの林の一部は焼畑で拓かれ、マンディオカ(キャッサバ芋)の畑が広がります。挿し木するだけで勝手に育っていく逞しいマンディオカは、彼らの重要な主食です。広大なカシューナッツの林では、ナッツが無限とも見えるほど収穫される豊かな土地です。今でも彼らは生活の大半を自給自足で生活しています。
大西洋を目指すレンソイス・トレッキングでも、彼ら地元の一族の協力が不可欠です。そして、延々と続き一見すると人の力の及ばない砂漠にも彼ら先住民の力が及び、それによりレンソイス砂漠でのトレッキングも安全に運行できるようになっています。
果てしない白砂漠を流れる大河に沿い、放牧されて砂漠を歩きまわる家畜を目にすることもあります。
地球ではない、どこか異世界にいるかのように感じるレンソイスでも、じっくり見つめてみると、人類の足跡が既に及んでいることがわかります。