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「失われた世界」の舞台:ロライマ
ジュールヴェルヌの「失われた世界」の舞台となったテーブルマウンテンが、ロライマです。
山上台地へのアクセスは、ヘリであっても徒歩であっても簡単ではありませんが、そこに広がる景色は苦労をしてでも行く価値のあるものです。
下界とはまったく違う空気と静けさを感じるでしょう。
霧の向うに浮かび上がる「奇岩」の数々は、映画「カールじいさん」で表現される、まさにその通りの印象なのです。
雨が降れば、水はけが極端に良い山上台地では、たちまち川を形作り何本もの滝が現れます。
その中でも桁違いに大きな滝が「エンジェルフォール」です。
ギアナ高地最大のテプイ(テーブルマウンテン)である“アウヤンテプイ”は、それだけ表面積も大きいので、集まる水が多くなります。
アウヤンテプイの中心部に割けるように入り込む谷の奥に、アウヤンテプイの水をまるで全て集めるかのようにして、エンジェルフォールは成り立ちます。
テプイの絶壁は600~1000mほど、綺麗に切れ落ちています。
遠目に見れば、トレッキングでは登れないように見えますが、ロライマに関しては、一ヶ所だけ斜めに崩落している箇所があります。
このルートを歩くことで、体力は必要ですが、ロライマには特別な技術無しで登り下りが可能です。
グーグルアースで見ると分かるように、衛星画像で見るギアナ高地は、雲ばかりです。
“バケツをひっくり返す”という表現がピッタリなほど降る雨は、土壌を作る前に有機物を流してしまうことも、山上台地に植物が少ない理由です。
ピンク色の砂は、岩盤の柔らかい部分(砂岩)が風雨に砕かれたものです。
水晶の結晶も混じることで、独特の砂になるのです。
ロライマの山上では、「水晶の谷」があるほど、水晶が散らばっています。
かつては人間と同じくらい大きな水晶の塊が見つかったりしていますが、多くは人に持ち去られてしまっています。
そのような厳しい環境が、800m前後の絶壁により下界と隔絶されることで、進化から取り残された生物や風変わりな植物が営々と生き残ることになるのです。
無数にあるテプイ(テーブルマウンテン)同士も、絶壁により動植物の交流を阻まれているので、テプイごとに異なる進化を遂げています。
その仕組みは、ガラパゴス諸島の動植物の進化と同じです。
一見すると、広大な一枚岩に見えますが、実際には裂け目がたくさんあります。
目的地を決めていても、縦横無尽に走る数メートルの裂け目を、果てしなく迂回する必要があるので方向感覚も狂ってしまいます。
ベテランのガイドがいなければ自由に動くことさえできないのです。
テプイごとに独自の進化を遂げている、まさに“ロストワールド”で今起きている問題は、人間による環境問題です。
トレッキングでは、トイレの痕も持ち帰るように徹底的に努力されていますが、山上の生態圏は徐々に崩れ始めているのが現実のようです。