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絶海のドレーク海峡に舞う巨鳥
陸地から遠く離れたドレーク海峡で、船の周りを一羽の巨鳥が舞っている。
舞うというよりも、空を鋭く切り裂くように飛ぶ様子は、滑空すると言ったほうが良いのかもしれません。
休憩する島が一つも無い荒海で、この鳥はどのように生き延びるのだろうか。
翼を広げると3mもあるこの巨鳥アホウドリが、久しぶりに見た生命の姿でした。
南極海にあるドレーク海峡は、アルゼンチン最南端の街ウシュアイアと、南極大陸から突き出す南極半島の間にあり、約650キロの海に島は一つもありません。
世界で最も広いこの海峡は、世界で最も荒れる海域でもあります。南緯60度はその厳しい波風から「絶叫する60度」と呼ばれています。
この地球でも特に厳しい環境では鳥を見ることは全く無かったので、このアホウドリの姿にはとても驚きました。
アホウドリはその巨体から自分で飛び立つことができない鳥です。
羽を広げ強い向かい風を利用して空に浮き上がる必要があります。
ドレーク海峡の650kmの区間には、アホウドリが降り立つ場所は全く無いので、海峡縦断はまさに命懸けです。
船がウシュアイアを出発して2日目、南極半島まではまだ丸一日以上もかかります。
冷たい暴風の下で、アホウドリは大きな羽で風を捉えて、船の上空を何度も旋回していました。