“風の大地”と呼ばれるパタゴニアでは、南極ブナもまた“風”に支配されている。
春に咲く南極ブナの花の受粉の仲立ちとなるのは、風(風媒花)だ。
晩夏に熟した実は、やはり風によって広く運ばれて行く。
100年を越す大木に育った南極ブナも、最後は風によって倒される。
森を歩けば、いたるところに倒木を見るだろう。
台風のような強風の吹き荒れた日、南極ブナに大きく縦のヒビが入り、傾くのを見たことがある。
過酷な環境の中に順応した南極ブナは、風とうまく折り合いを付けて、生き残りの手段にも利用しているのだ。