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アザラシの楽園に響くイビキ
南極半島に訪れる短い夏、晴れた日は気温が15度くらいまで上がり、毛皮をまとうアザラシにとってはきっと暑く感じることでしょう。
太陽が中天に上がる頃、静かな湾内には数十匹のウェッデルアザラシが、いたるところで昼寝をしていました。おそらく朝食の狩りも無事に終わり、日光浴をしながらほっと一息ついているのでしょう。
氷塊の上、あちこちで昼寝するアザラシからはイビキも聞こえてきます。ゾディアックボート(ゴムボート)で氷塊の迷路に入り込むと、どこからか不思議なイビキが聞こえてきました。
その音はあるリズムで定期的にかき消えてしまいます。水面をよく見ると、それは鼻だけ水上に出したアザラシによるイビキでした。器用にも浮かびながら昼寝をしているのですが、浮かんでは沈む一定のリズムで上下しているので、水中に沈むとイビキはゴボゴボと音を立ててかき消えます。そして、また水面に鼻が浮かび上がり、大きなイビキを辺りに響かせる。
ボートで接近する私たちを全く気にすることなく、イビキを響かせて、アザラシの楽園はどこまでも緊張感がなく、平和な雰囲気が漂っていました。
野生動物が生きる世界は弱肉強食で常に生存を脅かされる環境ですが、ときには野生動物の世界にも休息の時が訪れるようです。
平和で気怠いアザラシの楽園を観察した後、湾を出て船に戻る頃、南極の変わりやすい天気は一変して冷たい風を吹かせてきました。
最南端に生息する哺乳類:ウェッデルアザラシ
ウェッデルアザラシは、地球上で最も南に生息するアザラシです。南緯78度まで生息することから、哺乳類で最南端に生息する生き物です。
寒さに適用しているためか、体形はずんぐりと丸太のように太っています。南極半島の周辺の夏は、食料となるオキアミが豊富なことから、大きな体に栄養をしっかりと貯めているのでしょう。
意外にも南極は食料となる生物が豊かな場所なのです。この豊かな食料を求めて、春から夏にかけて、野生動物は子育てをするために、南極半島に集まるのです。