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風景写真家・松井章のブログ

屋久島・宮之浦岳③:縄文杉の森から白谷雲水峡・照葉樹林へ

新高塚小屋から縄文杉へ

宮之浦岳で巨石と清冽な水の楽園を歩いた後は、巨木の森へ。
早朝、新高塚小屋(1501m)を出発して、縄文杉(1292m)へ下山します。
標高を下げるにつれて、森は深くなり、空気が湿度を帯びてきます。

宮之浦岳の縦走で縄文杉を訪れる大きなメリットは、人の少ない時間に縄文杉を見学できることでしょう。
1日目の宮之浦岳では、森林限界を越えた笹原を歩きます。冬季には積雪する山上は亜高山帯の風景です。
標高を下げて新高塚小屋を過ぎると、森はいよいよ深くなるのです。

縄文杉へ続く森は、針葉樹が中心の森となります。有名なヤクスギ(屋久杉)を始め、ツガ、モミなどの針葉樹に広葉樹が混ざる混合林です。

急な斜面にもどっしりと太い幹が天を目指して林立しています。森に充満する空気は明らかに山上の笹原とは異なる濃い空気です。

縄文杉に到着したのは朝7時半ころでした

樹齢4000年の巨木・縄文杉


朝に訪れた縄文杉は静かで、鳥のさえずりだけが聞こえました。
最初の日差しが森の中に射しこみ、樹齢4000年の縄文杉は厳かに浮かび上がります。幹回り16m・高さ30m、日本最大の巨木を目にすると、自然に神社に参拝するような厳かな気持ちになるものです。それはとても原初的な“畏れ”であると考えています。

メキシコの世界で最も太い巨木“トゥーレの木”

初めて巨木に出会ったのは、ずいぶん昔で20数年前です。
メキシコ・オアハカ州で訪れた「トゥーレの木」は、世界で最も太い木で幹回りは36mでした。30人が手を繋いでやっと一周できるほどの大きさです。
教会の敷地の公園にあるトゥーレの木は、縄文杉と同じく、幹が見えるだけで全体を把握することができず、壁のような幹に圧倒されたものです。
樹齢1400年と考えられるトゥーレの木は、縄文杉よりはるかに若いのですが、その存在感には縄文杉と同様に人の時間や感情を超越した何かを感じたものです。
アステカ時代に生まれ出て聖地とされ、スペインの統治下ではカトリック教会の聖地となり、今に至る時代の変遷を過ごしてきたのです。アステカの言語、ナワトル語では、この木は「水の老人」と呼ばれていました。

照葉樹林の白谷雲水峡


縄文杉の森を歩きさらに標高が下がると、木々の様相もまた変化していきます。標高700m前後の白谷雲水峡はヤクスギの森と照葉樹林が混生する森です。鬱蒼と茂る原生林は濃い緑に包まれて、地面は苔に覆われています。

照葉樹とは、秋に落葉することのない「常緑広葉樹」のことです。この常緑広葉樹の葉は照りが強いことから、その名の通りに呼ばれるようになったのです。

赤道付近では熱帯雨林と呼ばれる常緑広葉樹林ですが、日本のような温帯では、冬季も葉を維持するために葉は小さく厚いそうです。

照葉樹林はかつて東北以南の日本を覆うほどの規模で広がり、縄文時代を育みました。すでに照葉樹林の多くは失われて、僅かに残るのは神社の“鎮守の森”といった社寺林が大半です。

屋久島にはこの貴重な照葉樹林がまだ残ることが、世界自然遺産の登録の大きな要素となりました。

屋久島には、太古の日本の風景が今も残っているのです。

宮之浦岳:おすすめの縦走ルート


宮之浦岳からの縦走ルートは、花之江河から始めることで、縄文杉や白谷雲水峡に到着する時間を、わりと人の少ない時間に訪れることができます。

前半は亜高地帯の大展望を楽しみ、後半は原生林の森を歩くことで、2種類の風景を望めるので、時間があれば宮之浦岳を縦走したいものです

宮之浦岳縦走:花之江河から縄文杉、白谷雲水峡へ



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