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巨石が散らばる天上の楽園
宮之浦岳の山上の風景は、下界とは異なる別天地です。
花之江河から宮之浦岳へ、少し標高を上げて森林限界を越えると、気持ちの良い笹原が宮之浦岳の山頂まで広がります。風が吹くと、水面に走るさざ波のように緑の笹原は波打ちます。
笹原からポツリポツリと突き出すのは、花崗岩の巨岩です。近づけば10メートルを越すような大きな岩が、無造作に転がっているようです
花崗岩の島・屋久島
東シナ海の洋上に、約2000mも突き出るように聳える屋久島は、島全体が花崗岩で成り立ちます。花崗岩とは、マグマが地下深くで冷え固まった岩で、極めて硬い岩石です。海抜0mから約2000mまで硬い花崗岩がそそり立つので、雨が降ればたちまち急流となり、海に流れ去ります。
原生林の苗床である土の層は薄く、分厚い岩石層から見れば、それは薄い膜のようなものです
山上の笹原に転がる花崗岩は、島全体が本体である花崗岩のごく一部だけが、地表に姿を現しているのです。
日本には古来から巨石信仰というものがあり、巨石の傍には社があるものです。笹原に散らばる巨石にも、岩屋の奥に小さな社をみることができました。
宮之浦岳の山頂から望む絶景
宮之浦岳の山容は“女性的”と表現されることがあります。
厳しい岩石が行く手を遮るようなことは無く、丸みを帯びた宮之浦岳は歩いていれば確実に山頂に着くからです。
山頂(1936m)に着くと、西に緑の屏風のように聳える永田岳(1886m)が望めます。
この日、台風が去った翌日の台風一過で、青空は澄み渡り、新緑に輝く永田岳が実に美しかったです。
はるか洋上の雲海を見下ろしながら、しばらく山頂で360度の絶景を楽しみました。
屋久島の鹿:ヤクシカ
山頂から少し下りたところで、ニホンジカの亜種・ヤクシカがいました。
人を全く恐れずに食事に没頭しています。
かつて個体数が激減したヤクシカも徐々に生息数は回復しているそうです。
ヤクシカはニホンジカに比べて小型の鹿です。これは屋久島に天敵となる大型の捕食者がいないことから、進化の過程で小型化したと考えられているそうです