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風景写真家・松井章のブログ

「世界一幸福な国」ブータン:チベット仏教が支える心

ブータン人と不可分のチベット仏教の信仰

ヒマラヤ山脈の峻険な谷間の小国「ブータン」は、世界で最も幸福な国と言われる桃源郷のような国です。長い鎖国を経て、徐々に外国人に門戸を開いているので、急速に変わりつつありますが、まだ笑顔あふれる素朴なブータンは残っています。

ブータンの人々の精神世界の根本を成すのが、チベット仏教です。チベットのラサを中心に栄えたチベット仏教の最も古い宗派「ゲルク派」を信奉しています。中心地のラサでは時代とともに宗派は変わっていても、ヒマラヤ奥地の辺境のブータンでは、古来のゲルク派が綿々と生き残ったのです。

チベット仏教が広まる前の時代、モンゴルからヒマラヤにかけて、諸民族は武力を重視していました。チンギスハーンがモンゴル帝国を築いた時代に、チベット仏教はモンゴルやヒマラヤ世界に広く浸透して、人々は武器よりも信仰を大事にする平和的な民族に変わったそうです。

ブータンの人々の笑顔を見ていると、チベット仏教が人々の心の支えであることが伝わってきます。

僧院や丘、風が吹き通る場所に、チベット仏教の僧は旗を掲げます。5色の旗「ルンタ」です。世界の五元素を表す旗には、びっしりと経文が刻まれて、仏や馬が記載されています。
僕が好きなのは「馬」のイラストです。この馬は「風の馬」で、“人々の安寧への祈りを風に託す”という意味があるそうです。
信仰に寄り添うブータンの人々を見ると、現代日本で信仰と無縁に育った自分に少し寂しさを感じます。

我欲を押さえて慎ましく生きる秘訣を、きっとチベット仏教から自然に学んでいるから、ブータンは「世界で最も幸福な国」と呼ばれるのでしょう。

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