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チリで発生した騒動の最新情報
チリの首都サンティアゴ(サンチャゴ)で発生した暴動は10日ほど過ぎて、徐々に沈静化しています。
抗議運動はたちまち暴動に発展して死者も出るに至り、政府はサンティアゴ市内に「緊急事態宣言」を発令しました。その後、「外出禁止令」の発令で夜間の外出が禁止されています。
旅行する人はくれぐれも注意する必要がありますが、パタゴニア、イースター島、アタカマ砂漠などの観光エリアは平穏です。サンティアゴの国際空港も運行も徐々に平常を取り戻しつつあります。
発端は地下鉄の値上げ「4.5円」への抗議運動だった
この暴動の発端は、地下鉄の運賃の値上げ(4.5円)に反対する学生たちの抗議運動でした。抗議運動はたちまち暴動に発展して、死者も出るほどに一時は混乱していました。
たった「4.5円」の値上げが導火線となった抗議運動は、なぜ暴動にまで発展したのか。
チリは南米の中で最も好調に経済発展する優等生的な国ではありますが、構造的な社会問題に原因があるともいえるようです。
ピノチェト軍事独裁政権による経済成長「チリの奇跡」
1990年まで続いたピノチェト軍事独裁政権は、1973年にアジェンデ左派政権をクーデターにより転覆しました。このとき一説には数万人が犠牲になったともいわれます。
この軍事独裁政権の時代に、アメリカから始まった新自由主義経済「シカゴ学派」による経済政策が採用されました。それは「チリの奇跡」とも呼ばれる目覚ましい経済成長をもたらし、民主化後も経済政策は引き継がれ、南米で最も安定して豊かな国へと発展したのです。
経済発展による「貧富の差」が暴動を引き起こした
今回の暴動の発端は「4.5円」の値上げに対する抗議でしたが、その根は深く「貧富の格差」という社会問題に行き着くようです。
著しい経済発展で、所得が大きく上がりますが、同時に物価も高騰しています。物価の高騰に付いていくことができない人々は、経済発展の恩恵から振り落とされていきます。それは高齢者などの年金受給者や学生にインパクトがあるのです。
同時に経済成長の恩恵を受ける人々に富と権力は集中する中で、社会は新しく経済的に階層化してしまいました。
新自由主義という経済が世界を席捲する中で、この「貧富の格差」は、世界のいたるところで今起きている社会問題です。日本でも同じような分断が進んでいます。
こうして生まれた「貧富の格差」や「既得権益層」への怒りが、今回の騒動の発端であるようです。
社会問題が表面化した騒動の行方
社会に蔓延する不平等に対する不満や怒りが、あるラインを越えてしまったという意味で、これからもこの騒動は様々な場面で同様に勃発する可能性を秘めています。
とても根の深い社会問題をどう乗り切るのか、チリはいま大きな分岐点に差し掛かっているのかもしれません。
そして、いまチリで起きている問題は、その歴史や状況を見てみても、日本でも起きている社会の階層化と同じように思えます。日本の近未来を見るようで、チリの状況は他人事ではない世界的な社会問題なのです。