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虹の谷・ウマワカ渓谷
アルゼンチン北部サルタ地方は、ボリビアやチリと国境を接するアンデス山脈の山麓で、インカ文明の痕跡が色濃く残るエリアです。その中でも、ウマワカ渓谷はアルゼンチン最北端に位置して、インカ系の先住民ケチュア族が暮らします。
ウマワカ渓谷の基点となるプルママルカ村は、不思議な色彩の岩石に囲まれた“虹の谷”として有名です。このウマワカ渓谷は、月面世界のような荒涼とした山々が連なり、露出した地層や岩石がカラフルに輝くことから、近年ツーリストの注目を集めています。
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サボテンに覆われる「ティルカラ遺跡」
ウマワカ渓谷の谷間を見下ろす丘にあるティルカラ遺跡は、インカ帝国の城塞遺跡です。もともとはこの地域に1万年以上も先住民が居住していましたが、12世紀頃にオマグアカ族によって建設されました。後にインカ帝国に編入されて、インカ帝国の辺境地区となったのです。
かつて栄えた城塞も今では、サボテンの林に埋もれています。遺跡を押しのけるように3~4mのサボテンが林立して、遺跡とサボテンが不思議な風景を作り出しています。
迷路のような遺跡を歩き、山頂からはウマワカ渓谷を一望することができます。金銀を採掘していたウマワカ渓谷で軍事的な拠点であったティルカラ遺跡は、ここから周囲に睨みを利かせていたのでしょう。
杜甫の漢詩「春望」の一節を彷彿とさせるような、サボテンに覆われた遺跡を歩きながら、大きな地球のリズムの中で一瞬輝いた小さな人の営みの痕跡は、清々しく自然と調和していると感じました